マスダ動物病院のエピソード
長寿のチロちゃん・18歳
静岡市では、毎年家族の一員として共に暮らした大切な動物達とお別れをされた方が一堂に集い、慰霊祭を行っています。
去るH22年の9月24日にも、静岡市民文化会館の大ホールに於いて、約1,050名の方々が参加され、第34回動物慰霊祭が行われました。
式典では、慰霊の言葉の朗読(当院の飼い主さんが、慰霊の言葉を朗読して下さいました。当院HP内の「親愛なるジョン君へ」に載っています)、管弦楽の演奏、参加者全員での献花を行い、お別れした動物達の冥福を祈りました。
またこの動物慰霊祭に先立ち、高齢ながら今現在も元気に頑張り続けている長寿の犬、猫の飼主さんが、それぞれ6名ずつ飼育功労者として表彰されました。表彰式に引き続き、会場の大きなスクリーンに受賞されたわんちゃんと猫ちゃんの穏やかな日常の様子が映し出され、会場の空気が一瞬にしてほのぼのとしたものに変わりました。
18歳のわんちゃんや20歳を超えた猫ちゃん達が、これからも益々元気にしあわせでありますように……♪と、願わずにはいられませんでした。

そしてとても嬉しいことに、今年度の長寿犬の飼育功労者として、当院のチロちゃんとハナちゃんの飼い主さんが、この名誉ある賞を受賞されました。
「本当におめでとうございます。」
この素晴らしい賞を受賞された記念に、是非沢山の方にもご紹介させて頂きたくて、ご家族のご協力の元、当院のホームページに載せさせて頂くことに致しました。

沢山のわんちゃんや猫ちゃんが、チロちゃんやハナちゃんのようにしあわせに長生きできますように……♪

 

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高橋チロちゃん
紀州犬と柴犬のミックスのチロちゃんは、H4・11・12生まれ(受賞当時18歳)
若かりし頃からスレンダーで、軽やかに歩く姿が印象的だった健康美人(美犬さん)です♪
チロちゃんのご家族に、質問させて頂きました。

 

  1. チロちゃんは、どんなきっかけでお宅のわんちゃんになりましたか?
    • 友人から「兄の家で子犬が5匹生まれたので見に行こう」と誘われ、気が進まなかったが見に行き、一匹の子が他の子に噛まれていたので可哀想に思い、飼うことにしました。顔も他の子犬よりも可愛かった。
  2. チロちゃんは、どんな性格の子ですか?
    • 小さい頃から大きな犬と出会っても吠えたりしなかったので、芯は強い犬だと思います。
  3. 今までで思い出に残っている出来事を教えてください。
    • 車に乗って外を見るのが好きで、乗せて行けない時でも連れて行って!とよく吠えたりしたこと。
    • 雷が嫌いで、雷が鳴ると気が狂ったようになってしまったこと(今は耳が遠くなったのか、神経が鈍くなったのか反応しなくなりました)
    • 花火も怖がり、音がするとぶるぶるして怖がったけれど、今は平気になりました。
  4. 今までに病気をしたことがありますか?
    • 肉類、脂っこいものを与えていたら、膵炎にかかってしまいました。
    • 真夏に木の陰で休ませたりしていたら、皮膚病に罹ったので、以後扇風機やクーラーなど気を使っております。
  5. 最近の日常の様子を教えてください。
    • トイレが近くなり、2〜3時間でする時があります。
    • 食欲が旺盛で、欲しがる時の声は、昔とそんなに変わりがないように思います。

  6. 今、気を付けていることはありますか? また長生きの秘訣は何ですか?
    • 3年くらい前より犬小屋に入らなくなって屋内で飼っているので、そのせいもあって長生きしていると思います。
    • 何か調子が悪いと、すぐに病院で診てもらっております。
    • ひなたぼっこが好きなので、冬はいつも日光浴をさせています。
  7. チロちゃんが話せるとしたら、何か聞いてみたいことはありますか?
    • 夜トイレをさせて家に入れた後、何か欲しそうにしつこいくらいに吠えるので、「何が欲しいの?」と聞いてみたいです。
  8. チロちゃんに言葉をかけてあげるとしたら、どんな言葉をかけてあげますか?
    • 「夜はあまり吠えないで!」と言いたいです。

 

今から18年前の1月(‘93・1)に、お母さんの腕に抱かれて、初めてチロちゃんが病院にやってきました。
コロコロっとした子犬の姿を見て、「病院のご近所で、こんなに可愛い子が飼われていたなんてビックリ!」と思ったことが懐かしく思い出されてきます。

 

チロちゃんは若い頃膵炎に罹り心配しましたが、療法食を与え、時々お腹をこわすものの病気が進行することなく、他にも目立った病気もせずに、毎日お家の人にお散歩に連れて行ってもらって、のんびり穏やかに過ごしていたようでした。

 

また数年前の夏に、突然皮膚病に罹り背中の毛が抜けたり、「デスメ膜瘤」という目の病気などをして飼い主さんが心配されたこともありましたが、チロちゃんに何かあると、その都度お母さんがすぐにチロちゃんを病院に連れて来て下さるので、いつでも早期に対応することが出来ました。

 

またチロちゃんの口が開かないので、食べたくても食べられない様だと心配され、飼い主さんがチロちゃんを連れて見えたことがありました。
飼い主さんのおっしゃるように、チロちゃんは口がほんの1cm程度しか開きませんでした。どうも口を開け閉めする筋力が委縮し、口が開かなくなってしまうという珍しい病気に罹っているようでした。
ただ、この病気は薬で治るタイプと薬でも治らないタイプがあり、残念ながらチロちゃんのタイプは後者のタイプで、その薬を投薬しても全く反応がありませんでした。
そこでチロちゃんにとっては大変なことだったとは思いますが、毎日1回口に特殊な器具を入れて、委縮した筋肉を少しずつストレッチして行くことしました。
最初の1〜2週間は、ミリ単位でしか口が開く幅が広がって行きませんでしたが、飼い主さんとチロちゃんの努力のお陰で、その後徐々に2cm、3cmと開く様になって行きました。
そして、今ではすっかり元通りになり、何でも食べられるようになって、一時期減ってしまった体重も増え、以前の様な健康なチロちゃんに戻ることが出来ました。

 

そんなチロちゃんのお家は、病院からほんの2〜3分の所にあります。
時々お庭に出て、ひなたぼっこをしながらぐっすり眠るチロちゃんの姿を見て、あまりにしあわせそうで思わず笑みがこぼれてしまいます。
また、チロちゃんは18歳という高齢ながら、いまだに毎日のお散歩も欠かさず行かれているようです。
以前ある雨上がりの晩に、トコトコ飼い主さんと一緒に軽快な足取りで歩くわんちゃんに会いました。
何気なくわんちゃんを見ていると「こんばんは!」と飼い主さんがご挨拶をして下さり、そこでそのわんちゃんがチロちゃんだと気付きました。
日によって歩く速度や力強さに変化があるそうですが、高齢のため頭は少し下がり気味ではあるものの、軽やかに歩くチロちゃんを見て、“ホントに18歳?”と目を疑ってしまいました。
そしてお父さんの横で一生懸命に歩き遠ざかって行くチロちゃんの後ろ姿に、思わず心の中で「チロちゃん、かんばって!!」と声援を送っていました。

 

そんな元気で頑張りやさんのチロちゃんでも、お父さんとお母さんにとって、ひとつだけ悩み事がありました。
それは、時々夜になると、急に吠えてしまうということでした。
多少認知症の症状があるのかもしれませんが、食べ物を与えると一時は鳴き止むものの、またしばらくすると鳴き始めてしまうそうです。
そんなチロちゃんに今聞いてみたいことが、「何が欲しいの?」、またチロちゃんに言葉をかけてあげるとしたら「夜はあまり吠えないで!と言いたいです」とお答え頂きましたが、それが今の飼い主さんの素直なお気持ちなのだなあと思います。

 

日々のご苦労はあると思いますが、温かく優しい飼い主さんにめぐり合い、何かあるとすぐに対応してもらえたからこそ、チロちゃんもここまで元気に長生きが出来たのではないかと思います。
このままなら、チロちゃんは20歳目指せそうですね!
どうか、これからも益々おしあわせでありますように〜♪
担当 増田葉子

 

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