マスダ動物病院のエピソード
輝ちゃんからの贈り物 4
そして、そう思ったその次の日、突然、輝ちゃんらしい子を見たというお電話を頂いたのです。輝ちゃんがいなくなってから13日目のことでした。
「たぶん輝ちゃんだと思うんだけど……。橋の下のホームレスさんの所に、犬と猫が何匹か暮らしていてね、そこにいる子がビラに載っていた輝ちゃんに似てて、「輝ちゃん」って呼んだらこっちを向いたから、きっとそうだと思ってね」とお話ししてくださいました。
“ホームレスさんの所……。ああそうか、輝ちゃんは、ホームレスのおじさんの所にいたのか。きっと輝ちゃんだ。寒くて淋しい思いをしているおじさんを暖かくしているんだね。本当に、輝ちゃんらしいなぁ……”と輝ちゃんの顔と情景が目に浮かぶようでした。

 

情報を頂いてすぐに主人に連絡を入れると、講習会に行っていた主人が、お昼の時間を使って輝ちゃんを迎えに行ってくれました。生憎おじさんは留守のようで、主人は思わず輝ちゃんをさらっていくような早業で胸に抱きかかえ、バイクで帰ってきました。
家で待っていた私を呼んで、「輝ちゃんだよ」と言って手渡してくれた時、主人は目と鼻を赤くして涙ぐんでいました。主人は、輝ちゃんが主人を見てすごく喜んだのが、本当に嬉しかったそうです。

 

夕方、改めて主人と二人で、橋の下に住むホームレスのおじさんの所に、輝ちゃんのお礼に行ってきました。
おじさんに、輝ちゃんがおじさんの所にやってきた経緯をお話しして頂きました。
10日程前、おじさんの知らないうちに、お水とご飯と首に白いヒモが巻かれた犬が入っていた箱が置かれ、体を見たら皮膚病だったので、「これは捨てられちゃったな!」と思い、たとえ皮膚病の犬でもおじさんは輝ちゃんを飼おうと思ってくださったのだそうです。
おじさんは早速首輪を買い、知り合いの大工さんに頼んで輝ちゃんのための犬小屋も作ってくださったそうです。
「僕もね、10日程一緒にいると、本当に可愛くて、情が移ってきちゃったんだよ。夜も一緒に寝ていて、鳴いた時外に連れて行くとおしっこをしてね、本当にいい子なんだよ。今日も、自分が留守だったものだから、誰が連れて行ったかわからなかったけど、きっと元の飼い主さんだろうと思って、それならその方が幸せだと思ったんですよ」
おじさんはとっても優しくお話ししてくださいました。

 

本当に、輝ちゃんはおじさんに良くして頂いたようで、私たちは感謝の心で一杯になりました。
お礼に、ちょうど朝お餅をついたので、それを熱々の磯辺焼きにして、柿やフード代等と、輝ちゃんのことをいつでも思い出して頂けるように、とびっきり可愛く撮れた輝ちゃんの写真もお渡しして来ました。
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