マスダ動物病院のエピソード
祝開院と祝ちゃん
昭和62年9月9日の開院当日の朝。
「さあ!これからだ!」と意気込みつつも、まだ誰一人の来院もなく閑散としている病院内に、突然一本の電話の音が鳴り響きました。
「3歳のビーグルですが、今朝急に横になったままグッタリして動きません。呼吸はしているようですが、呼んでも何も反応がありません。死にそうなので、先生すぐに来てもらえませんか?」
往診時間は午後だから…なんて言っている場合ではありません。一刻を争う事態です。電話を切り、すぐお宅まで駆け付けました。
すると、電話のお話の通り、一匹のビーグルが、呼んでも横になったまま目も動かせない状態でした。
すぐに病院に連れ帰り、即入院です。
検査に点滴、注射と懸命に処置をし、飼い主さんと祈る思いで治療にあたりました。
その思いが通じたのか、その夕方から意識が戻り始め、途中痙攣を起こしたりと色々苦労はありましたが、3日間の入院後、すっかり元気を取り戻し、涙を浮かべ喜ぶ飼い主さんと共に、元気に退院していきました。

 

そんな中、私たちが一番驚いたことは、その開院第一号のビーグルの名前が、なんと「祝(いわい)」だったということでした。なんでも、飼い主さんのお子さんが大学に入学したお祝いに飼い始めたとのことですが、開院から今現在、この名前をつけた動物は、祝ちゃんだけでした。
無事退院していかれるその記念の日に、祝ちゃんを中央にみんなで記念写真を撮りました。いつまでもあの時の気持ちを忘れずに、真面目に診療することを心掛けようと、今でも受付の片隅に飾って、日々治療に励んでいます。

 

開院当日に、突然死にそうな犬が来て、そして生死の間をさまよい、そこを何とか乗り切って無事退院していった、私が初めて診療した動物。その子が「祝」という名前だったという、今考えてもなんとも不思議なお話でした。
院長 増田敏行

 

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