第60回
【知って得する動物の病気の豆知識 その56】
「パピークラス」
今月は、私の動物病院でも2年程前からスタートした「パピークラス」についてお話し致します。
直訳すると「仔犬の教室」といったところでしょうか。
パピークラスの呼び名以外でも「パピーパーティー」とか「仔犬のしつけ教室」等の呼び名でも行われているようです。これらをレッスンの回数や方法により厳格に区別する考え方もあるようですが、本来の目的は同じであり、ひとつですので、私自身はあまり厳密な区別をしておりません。したがって今月のお話の中では、それらすべてを統括し「パピークラス」とさせて頂きます。
私なりの言葉で言えば「良い犬に育ってもらう為の基礎作り」といったところです。
犬の寿命は十数年と長いものです。その長い期間家族の一員として付き合っていく為には、性格の良い犬に育ってもらうことがとても重要です。その為のパピークラスなのです。感受性の高い仔犬の頃に間違った接し方をしてしまった為に将来色々な問題行動が起きてしまい、飼い主さんも動物もお互いにフラストレーションを感じ、最終的にお互いの絆が希薄になってしまうケースも時々見受けられます。
将来、飼い主さんを困らせる事のない立派な(?)成犬になるように、性格が形成され始める重要な仔犬の時期に、正しい刺激を与えてあげる事が重要なのです。
この重要な時期に全く刺激を与えられなかったり、逆に間違った刺激や過剰な刺激を与えてしまった場合、成犬になってびくびくした犬になってしまったり、吠えたり、咬んだり……etc、色々な問題をもった成犬に育ってしまいます。
硬い言い回しになってしまいましたが、端的に言うとパピークラスはヒトで言う幼稚園や小学校の低学年に当たると思います。
自分の幼稚園や小学校の低学年の頃、何を学びましたか?
学力的には簡単な計算や読み書きやお絵かきなども学んだ事柄のひとつですが、もうひとつ最も重要な事柄として、集団(行動)というものや友達同士の付き合い方を学んだと思います。いわゆる「社会化」の第一歩です。幼稚園の1クラスという小さな社会ではありますが、歴然とした社会なのです。私自身は近所の仲の良い友達と手をつないで毎日幼稚園に通った事、クラスの中には一人体が大きく体力のあるガキ大将的な子がいた事、「その子には逆らえないな」と感じた事を覚えています。
小さな社会ではありますが、その小さな社会の中で幼かった私なりに他の子との関係(社会化)を考えたものでした。
もうひとつ、ちょっと想像してみてください。この重要な時期に部屋から一歩も出してもらえず、他の子供や人間と接することなく、様々な情報や刺激をも完全に断たれたらその子はどう育つのでしょうか?
幼稚園や小学校にも通わせてもらえず、ましてや外界と閉ざされた環境に置かれた子が、12歳になったから突然中学校に行けと言われても、学校でうまく友達を作ったり、集団生活を送って行けるのでしょうか? ということです。
レッスンの内容、進め方、対象とする月齢等は動物病院によって多少違いはあるかも知れませんが、一般的には最低1回の混合ワクチン接種が済んでおり、健康に問題のない仔犬が対象になると思います。
パピークラスでは、何でも吸収する頭の軟らかいうちに「人っていいものだ」とか「他のワンちゃんと遊ぶのって楽しいな!」と感じてもらえることを基本とし、将来必要になってくる様々な要因(例えばお留守番・トイレ・爪きり・歯磨き・吠えたり、咬んだりしないように)を想定し、それらの予備の予備練習をレッスンの中で仔犬とともに飼い主さんも勉強していくのです。
もうひとつパピークラスをやってみて私が思う事は、パピークラスを卒業された飼い主さんは、診察の合間に色々な質問をされるようになっていく事です。とても良い事だと思いますし、やはり飼い主さんが自分のワンちゃんのことを真面目に考えるから疑問・質問が自然に湧いて来るのだと思います。又、飼い主さんとしても、病院のしつけ担当のスタッフといっしょにレッスンをしてきたわけですから、聞きやすいと言う事もあるのでしょう。しつけ担当のスタッフもいつもに増して笑顔で答えているようです。
トイレや甘咬みの問題ばかりではなく、歯も嫌がらず磨かせてくれて、一人ぼっちでもおりこうにお留守番ができたり、他の人に撫でられたら喜んで尻尾を振り、他の犬と会ってもちゃんとご挨拶が出来る、明るくおおらかな子になってくれたらと、どの飼い主さんも願っている事と思います。
多くの動物病院では、単に病気を治療したり、予防注射等により病気を予防するのみではなく、パピークラスに代表される様に飼い主さんと動物たちが幸せに暮らせるように様々なお手伝いができたらと考えております。
今までのこの動物病院だよりのバックナンバーの中にも参考になるものもあると思いますので、ここでご紹介させて頂きます。第3回「仔犬・仔猫の心理学」・第4回「犬の問題行動について(仔犬編)」・第48回「仔犬の気持ち」などです。一度こちらにも目を通しておいて頂けたらと思います。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
直訳すると「仔犬の教室」といったところでしょうか。
パピークラスの呼び名以外でも「パピーパーティー」とか「仔犬のしつけ教室」等の呼び名でも行われているようです。これらをレッスンの回数や方法により厳格に区別する考え方もあるようですが、本来の目的は同じであり、ひとつですので、私自身はあまり厳密な区別をしておりません。したがって今月のお話の中では、それらすべてを統括し「パピークラス」とさせて頂きます。
それでは、パピークラスの本来の目的とはいったい何なのでしょうか?
私なりの言葉で言えば「良い犬に育ってもらう為の基礎作り」といったところです。
犬の寿命は十数年と長いものです。その長い期間家族の一員として付き合っていく為には、性格の良い犬に育ってもらうことがとても重要です。その為のパピークラスなのです。感受性の高い仔犬の頃に間違った接し方をしてしまった為に将来色々な問題行動が起きてしまい、飼い主さんも動物もお互いにフラストレーションを感じ、最終的にお互いの絆が希薄になってしまうケースも時々見受けられます。
将来、飼い主さんを困らせる事のない立派な(?)成犬になるように、性格が形成され始める重要な仔犬の時期に、正しい刺激を与えてあげる事が重要なのです。
この重要な時期に全く刺激を与えられなかったり、逆に間違った刺激や過剰な刺激を与えてしまった場合、成犬になってびくびくした犬になってしまったり、吠えたり、咬んだり……etc、色々な問題をもった成犬に育ってしまいます。
硬い言い回しになってしまいましたが、端的に言うとパピークラスはヒトで言う幼稚園や小学校の低学年に当たると思います。
ちょっと昔を思い出してみてください。
自分の幼稚園や小学校の低学年の頃、何を学びましたか?
学力的には簡単な計算や読み書きやお絵かきなども学んだ事柄のひとつですが、もうひとつ最も重要な事柄として、集団(行動)というものや友達同士の付き合い方を学んだと思います。いわゆる「社会化」の第一歩です。幼稚園の1クラスという小さな社会ではありますが、歴然とした社会なのです。私自身は近所の仲の良い友達と手をつないで毎日幼稚園に通った事、クラスの中には一人体が大きく体力のあるガキ大将的な子がいた事、「その子には逆らえないな」と感じた事を覚えています。
小さな社会ではありますが、その小さな社会の中で幼かった私なりに他の子との関係(社会化)を考えたものでした。
もうひとつ、ちょっと想像してみてください。この重要な時期に部屋から一歩も出してもらえず、他の子供や人間と接することなく、様々な情報や刺激をも完全に断たれたらその子はどう育つのでしょうか?
幼稚園や小学校にも通わせてもらえず、ましてや外界と閉ざされた環境に置かれた子が、12歳になったから突然中学校に行けと言われても、学校でうまく友達を作ったり、集団生活を送って行けるのでしょうか? ということです。
パピークラスを行う動物病院が少しずつ増えてきたようです。
レッスンの内容、進め方、対象とする月齢等は動物病院によって多少違いはあるかも知れませんが、一般的には最低1回の混合ワクチン接種が済んでおり、健康に問題のない仔犬が対象になると思います。
パピークラスでは、何でも吸収する頭の軟らかいうちに「人っていいものだ」とか「他のワンちゃんと遊ぶのって楽しいな!」と感じてもらえることを基本とし、将来必要になってくる様々な要因(例えばお留守番・トイレ・爪きり・歯磨き・吠えたり、咬んだりしないように)を想定し、それらの予備の予備練習をレッスンの中で仔犬とともに飼い主さんも勉強していくのです。
もうひとつパピークラスをやってみて私が思う事は、パピークラスを卒業された飼い主さんは、診察の合間に色々な質問をされるようになっていく事です。とても良い事だと思いますし、やはり飼い主さんが自分のワンちゃんのことを真面目に考えるから疑問・質問が自然に湧いて来るのだと思います。又、飼い主さんとしても、病院のしつけ担当のスタッフといっしょにレッスンをしてきたわけですから、聞きやすいと言う事もあるのでしょう。しつけ担当のスタッフもいつもに増して笑顔で答えているようです。
今月は仔犬の社会化にとっても重要なきっかけとなる「パピークラス」についてお話し致しました。
トイレや甘咬みの問題ばかりではなく、歯も嫌がらず磨かせてくれて、一人ぼっちでもおりこうにお留守番ができたり、他の人に撫でられたら喜んで尻尾を振り、他の犬と会ってもちゃんとご挨拶が出来る、明るくおおらかな子になってくれたらと、どの飼い主さんも願っている事と思います。
多くの動物病院では、単に病気を治療したり、予防注射等により病気を予防するのみではなく、パピークラスに代表される様に飼い主さんと動物たちが幸せに暮らせるように様々なお手伝いができたらと考えております。
今までのこの動物病院だよりのバックナンバーの中にも参考になるものもあると思いますので、ここでご紹介させて頂きます。第3回「仔犬・仔猫の心理学」・第4回「犬の問題行動について(仔犬編)」・第48回「仔犬の気持ち」などです。一度こちらにも目を通しておいて頂けたらと思います。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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