第54回
【知って得する動物の病気の豆知識 その50】
「下痢」
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

 

昨年12月号では「嘔吐」についてお話し致しましたので、今月は嘔吐とともに来院する原因として多い「下痢」についてお話し致します。

 

下痢とは通常の便よりも、水分が多い便、あるいは粘液を含んでいる便を言います。便の硬さの程度により(軟らかいものから)水様便・泥状便・ソフトクリーム状便・軟便等の表現を示されます。更に血液や粘液を含んでいるのか否かも重要なポイントとなります。

 

 

〔下痢の原因〕下痢を起こす原因には様々なものがあります。以下に代表的な原因を述べます。
1)ウィルス:犬ではパルボウィルス・ジステンパーウィルス・コロナウィルス、猫ではパルボウィルス(猫伝染性陽炎ウィルス)等があげられます。
2)細菌:キャンピロバクタ−菌・サルモネラ菌・大腸菌等があげられます。
3)寄生虫:回虫・鈎虫・鞭虫・糞線虫・コクシジウム・トリコモナス・ジアルジア等があげられます。
4)食物に対するアレルギーや不耐性:ドッグフードやキャットフードの種類を変えた途端に、便がゆるくなったりする場合はアレルギーや不耐性を考慮する必要があります。
5)環境の急激な変化や、心理的な不安・緊張・心因的な要因により腸や胃の動きが亢進したり逆に低下したりします。また急な気候の変化も要因となるようです。
6)腸自身の病気:少々聞きなれない病気ですが「炎症性腸疾患(IBD)」という独特な腸に炎症が起きてしまう病気があります。一言で炎症性腸疾患と言っても様々なタイプがあり、また原因も食物抗原や微生物抗原が関係していると言われていますが、まだまだ不明な点もあり説明するのにも診断するのにも、また治療をするのにも難しい病気です。
7)腸の腫瘍:腸のリンパ腫や腺癌が起こると下痢を起こす事があります。
8)消化するための酵素の分泌欠乏:膵臓から分泌される消化酵素である膵液が分泌されなかったり、胆のうから出る胆汁が不足すると下痢を起こします。
9)中毒:食中毒や毒物の摂取により下痢を起こすことがあります。以上代表的な原因を述べましたが、他にも様々な原因があります。前回の「嘔吐」の時にお話し致しましたが「下痢」もあくまでも症状であり様々な原因があるということです。

 

 

〔下痢の分類:小腸性下痢と大腸性下痢〕
下痢は今述べたいずれかの原因により腸に異常が起きた時に起こる症状です。
その腸は大きく「小腸」と「大腸」に分けられます。
どちら(あるいは両者ということもありますが)の腸に異常が起きたかによって、下痢も「小腸性下痢」と「大腸性下痢」に分けられます。(小腸は胃からの内容物を更に消化し、また栄養を吸収する場であり、大腸は残物(小腸で栄養を吸収した後残った物)から水分を吸収し、硬くする場です。)
小腸性下痢と太陽性下痢を区別することは、診察する側から見るととても重要なことです。原因を追求するうえでも大切な情報になりますし、小腸性と大腸性では治療法も違ってくるからです。
それでは、飼い主さんから見てわかる小腸性下痢も大腸性下痢の違いを述べてみます。
(以下に述べる内容は下痢で診察を受ける時にも必ずと言って良い程、獣医師から聞かれる内容でもあります。)

 

 

それ以外にも「いつから始まったか?」「食事内容に変化はなかったか?」「食事以外の環境に変化はなかったか?」「ワクチンは定期的に接種しているか?」「他の症状(元気や食欲の減退あるいは嘔吐を伴うか否か等)はないか?」「お腹がゴロゴロ鳴っていないか?」等の質問を受けることがあります。

 

最後に、子犬・子猫が下痢の症状を示す場合、ウィルスや寄生虫が原因であることが成犬・成猫に比べて多い印象があります。
これらが原因の場合は、重体になったり、場合によって命に関わることもあります。定期的な検便やワクチン接種をしっかり行っておくことが大切だと思います。

 

 

今月は、下痢についてお話し致しました。
下痢の時に注目するポイントを飼い主さんが知っておけば、診断・治療する獣医師に適切に症状を伝えることができると思います。きっと獣医さんから「良く観察してますね」と喜んでもらえますよ。
これからも皆さんにとってうれしい情報を発信して行きたいと思います。今年もよろしくお願い致します。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。
動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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