第50回
【知って得する動物の病気の豆知識 その46】
「気管虚脱」
今月は気管虚脱という病気についてお話致します。
犬で発生はままありますが、猫やその他の動物では、あまり見られません。気管は呼吸のための空気の通り道で、喉と肺をつなぐパイプの役割をしています。その気管が脆弱(弱くあるいは軟らかく)になってしまうことにより、呼吸にともない気管内を空気が通る時につぶれてしまい、咳や呼吸時の異常音を示し(ガチョウの鳴き声のような「ガーガー」と低く響くような音:特に息を吸う時に目立ちます)病気が進行すると、空気の流れが閉ざされ、呼吸困難を起こし、場合によっては命に関わることもあります。
しかし、小型犬に限らず柴犬等の中型犬やゴールデンレトリバーやラブラド−ルレトリバー等の大型犬でもまれに発生します。
その他発生年齢は、1才〜15才までと幅広いものの一般的に中年以降に発生が多くなることおよび肥満傾向の犬での発生が多くなること等の特徴があります。
【2】咳は興奮・運動・首輪による圧迫によって悪化することがある(運動等で気管内の空気の流れるスピードが早くなると気管がつぶれやすくなります。例えばストローを勢いよく吸った方が、ゆっくり吸うよりつぶれやすくなります)
【3】時に咳にともない「げえっ」と吐きそうになることがある。
●獣医師による気管の触診
●頚部及び胸部のレントゲン検査(息を吸う時と息を吐く時の2タイミングにおけるレントゲン撮影)等。
重要なことは、早期に発見することです。早期に発見できれば、興奮や運動の制限、首輪から胴輪への変更、二次的に発生する気管粘膜の炎症に対するお薬等の投薬等により症状の進行を抑えることが可能になります。
犬の咳の原因には他にも色々なものがあります。フィラリア症や僧帽弁閉鎖不全症(第20回動物病院だよりでお話し致しました)等は、気管虚脱よりもずっと発生率の高い病気です。
しかし気管虚脱による咳か否かを含め早期に診断することは、どんな原因であれ早期に治してあげることができたり、あるいは万が一完治が難しい原因であっても病気の進行を抑えてあげることができると思います。
咳の原因がフィラリア症や僧帽弁閉鎖不全症以外にもたくさんあり、今回お話致しました「気管虚脱」といった病気もそれらの中の一つにあるんだということを、少しでも頭のすみに入れておいて頂ければ幸いです。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
気管虚脱は文字通り、気管が虚脱(気管が扁平につぶれてしまう)してしまう病気です。
犬で発生はままありますが、猫やその他の動物では、あまり見られません。気管は呼吸のための空気の通り道で、喉と肺をつなぐパイプの役割をしています。その気管が脆弱(弱くあるいは軟らかく)になってしまうことにより、呼吸にともない気管内を空気が通る時につぶれてしまい、咳や呼吸時の異常音を示し(ガチョウの鳴き声のような「ガーガー」と低く響くような音:特に息を吸う時に目立ちます)病気が進行すると、空気の流れが閉ざされ、呼吸困難を起こし、場合によっては命に関わることもあります。
例えば、通常のストローで空気を吸ってもストローは変形せず、空気をすうことができますが、もしストローが軟らかかったら空気を勢いよく吸うとストローは「ペコッ」とつぶれ、ストローの内面同士がくっついてしまい、空気を吸いたくても空気が吸えなくなってしまいます。
重度の気管虚脱はまさにこの状態に近くなってしまう訳ですから、とても危険な状態と言えます。
気管虚脱による症状の程度は、気管の軟らかさの程度、あるいはそれによる気管の変形の程度(つぶれ方あるいは扁平化の程度)により様々です。
毎回の呼吸毎に変形を繰り返している気管はやがて、気管粘膜の炎症を起こし、さらに過敏になりまた炎症による粘膜の腫れにより更に気管内腔が狭くなり、症状が進んで行くという悪循環にはまっていってしまいます。
■原因
原因としては、様々なことが言われていますが、はっきりとしておらずよく解っていないというのが現状です。ただ、気管虚脱の発生が好発する犬種として、チワワ・ポメラニアン・トイプードル・ヨークシャテリア・マルチーズ・パグ等が述べられており、小型犬に発生がみられることから、犬種的あるいは先天的な素因が存在する可能性も示されております。また、鼻ペチャが特徴の短頭種での発生もまま見られることから、鼻や口からの空気の通過がしにくいために気管に負担がかかって、気管虚脱を起こす一因になっているという説もあります。例えばストローで息を吸う時にストローの先端の半分くらいを指先で圧迫し、空気の入り口を狭くすると、ストローがつぶれやすくなってしまいますね。
しかし、小型犬に限らず柴犬等の中型犬やゴールデンレトリバーやラブラド−ルレトリバー等の大型犬でもまれに発生します。
その他発生年齢は、1才〜15才までと幅広いものの一般的に中年以降に発生が多くなることおよび肥満傾向の犬での発生が多くなること等の特徴があります。
■症状
【1】低く乾いたガチョウの声のように「ガーガー」と響く咳、および同様の音色の呼吸にともなう異常呼吸音(特に息を吸う時に目立つことが多い)
【2】咳は興奮・運動・首輪による圧迫によって悪化することがある(運動等で気管内の空気の流れるスピードが早くなると気管がつぶれやすくなります。例えばストローを勢いよく吸った方が、ゆっくり吸うよりつぶれやすくなります)
【3】時に咳にともない「げえっ」と吐きそうになることがある。
■診断
●咳の状態の観察
●獣医師による気管の触診
●頚部及び胸部のレントゲン検査(息を吸う時と息を吐く時の2タイミングにおけるレントゲン撮影)等。
■治療
治療は病気の程度により様々ですが、重症になってからの治療は、困難になってしまったり、リスクを伴う外科手術しかなくなってしまうことすらあります。
重要なことは、早期に発見することです。早期に発見できれば、興奮や運動の制限、首輪から胴輪への変更、二次的に発生する気管粘膜の炎症に対するお薬等の投薬等により症状の進行を抑えることが可能になります。
今月は、気管虚脱という病気に関してお話致しました。
犬の咳の原因には他にも色々なものがあります。フィラリア症や僧帽弁閉鎖不全症(第20回動物病院だよりでお話し致しました)等は、気管虚脱よりもずっと発生率の高い病気です。
しかし気管虚脱による咳か否かを含め早期に診断することは、どんな原因であれ早期に治してあげることができたり、あるいは万が一完治が難しい原因であっても病気の進行を抑えてあげることができると思います。
咳の原因がフィラリア症や僧帽弁閉鎖不全症以外にもたくさんあり、今回お話致しました「気管虚脱」といった病気もそれらの中の一つにあるんだということを、少しでも頭のすみに入れておいて頂ければ幸いです。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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