第46回
【知って得する動物の病気の豆知識 その42】
涙のはなしPart3:「今度はホントに涙のはなし」
前々回及び前回は、2回に渡り、代表的な涙があふれてしまう病気と、涙が不足してしまう病気と題し、涙に関する病気についてお話し致しました。
今月は、「ホントに涙のはなし」と題し、涙を科学的な立場から、皆様にできるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
ひとことで涙と言っても、とても奥が深いものなのです。
ほとんどの方は、涙は単に涙腺から分泌される水分だけからできているとお思いでしょうが、実は大変うまくできているのです。
この油の成分は、まぶた(眼瞼)にあるマイボーム腺という分泌腺から分泌されています(模式図参照)。
このマイボーム腺は、皮膚でいうと皮膚腺にあたります。また、人間でも時々起こる、いわゆる「ものもらい(専門的には麦粒腫、等と呼びます)」は、このマイボーム腺に細菌感染や炎症が起きて腫れたものをいいます。
この水成分は、もちろん涙腺から分泌される(模式図参照)いわゆる涙です。この層は、3層の中で一番厚い層となります。
この粘液(専門的にはムチンといいます)は、結膜に存在するムチンを分泌する細胞から分泌されます。この層も、油の層と同じく薄い層です。
1)油の層が、水(涙)の蒸発を防ぎ、
2)粘液の層が粘着力をもって、角膜から水の層(涙)がサラッと流れ落ちてしまわないようにしているのです。
生物は本当にうまくできていて、涙ひとつとっても、素晴らしいと感じてしまうのは、私だけでしょうか?
もし、涙がなかったら(あるいは少なかったら)、どうなるのでしょうか?
本来、体を作っている細胞のほとんどは、血管からの血液によって栄養と酸素をもらっています。しかし、角膜は透明でなくてはいけないので、血管のない組織なのです。したがって、涙から栄養や酸素をもらっているのです。もし、涙がなかったら、角膜炎を起こしたり、萎縮して透明な角膜の働きを失ってしまうでしょう。
もし、乾燥してしまうと……、
a)角膜表面に顕微鏡レベルの凸凹ができてしまい、角膜の透明性が失われてしまいます。ちょうど、ガラスは透明なのに、表面に凸凹のある曇りガラスは白っぽく見えるのと同じです。曇りガラスを水で濡らすと、透明性が増しますね。
b)違和感や、場合によって痛みを感じてしまいます。角膜はとても敏感にできており、神経も沢山存在します。体の中で最も痛みに対して敏感な組織と言われています。眼に小さなゴミやホコリが入っただけでも、とても痛いですよね。
c)まばたきがスムーズに行えなくなってしまいます。
また、角膜表面に涙の涙膜があることで、更に表面が平滑になり、凸レンズとしての角膜の性能が向上します。
これを読まれた方は、少しだけ物知りになったのではないかと思います。
今月は、涙の構造と働きについて、お話しいたしました。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
今月は、「ホントに涙のはなし」と題し、涙を科学的な立場から、皆様にできるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
ひとことで涙と言っても、とても奥が深いものなのです。
ほとんどの方は、涙は単に涙腺から分泌される水分だけからできているとお思いでしょうが、実は大変うまくできているのです。
1 なぜ、涙はすぐに蒸発してしまわないのでしょうか?(すぐ蒸発してしまうと、おそらく普段よりも倍以上まばたきをしなくてはいけません)
2 なぜ、涙は眼の表面(角膜表面)にくっついていて、すぐには流れ落ちてしまわないのでしょうか?(すぐに流れ落ちてしまうと、これもまた、おそらく普段よりも倍以上まばたきをしなくてはいけません)
この二つの疑問に対する答えは、涙の3層構造にあります。ヒトも犬も猫もウサギもハムスターも、全て涙は次の模式図のように3層からできています(この3 層をあわせて専門家は「涙膜(るいまく)」と呼んでいます。以後、「涙膜」という言葉がしばしば出てきます)。
涙の3層構造の一番外側の薄い層は、簡単に言うと油の成分から成っています。
この油の成分は、まぶた(眼瞼)にあるマイボーム腺という分泌腺から分泌されています(模式図参照)。
このマイボーム腺は、皮膚でいうと皮膚腺にあたります。また、人間でも時々起こる、いわゆる「ものもらい(専門的には麦粒腫、等と呼びます)」は、このマイボーム腺に細菌感染や炎症が起きて腫れたものをいいます。
次に、涙の3層構造の真ん中(2番目)の層は、簡単に言うと、水成分から成っている層です。
この水成分は、もちろん涙腺から分泌される(模式図参照)いわゆる涙です。この層は、3層の中で一番厚い層となります。
最後に、涙の3層構造の一番内側(角膜と接している層)の層は、簡単にいうと粘液の成分から成っています。
この粘液(専門的にはムチンといいます)は、結膜に存在するムチンを分泌する細胞から分泌されます。この層も、油の層と同じく薄い層です。
少々難しくなってしまったかもしれませんが、要するに涙膜は、外側から油・水・粘液の3層からできており、水の層を守るために、
1)油の層が、水(涙)の蒸発を防ぎ、
2)粘液の層が粘着力をもって、角膜から水の層(涙)がサラッと流れ落ちてしまわないようにしているのです。
生物は本当にうまくできていて、涙ひとつとっても、素晴らしいと感じてしまうのは、私だけでしょうか?
次に、涙の働きについて、お話ししたいと思います。
もし、涙がなかったら(あるいは少なかったら)、どうなるのでしょうか?
■涙の働き
1.角膜表面全体を潤すことにより、角膜の細胞に栄養と酸素を供給している。
本来、体を作っている細胞のほとんどは、血管からの血液によって栄養と酸素をもらっています。しかし、角膜は透明でなくてはいけないので、血管のない組織なのです。したがって、涙から栄養や酸素をもらっているのです。もし、涙がなかったら、角膜炎を起こしたり、萎縮して透明な角膜の働きを失ってしまうでしょう。
2.角膜表面を潤すことにより、角膜を乾燥から守っています。
もし、乾燥してしまうと……、
a)角膜表面に顕微鏡レベルの凸凹ができてしまい、角膜の透明性が失われてしまいます。ちょうど、ガラスは透明なのに、表面に凸凹のある曇りガラスは白っぽく見えるのと同じです。曇りガラスを水で濡らすと、透明性が増しますね。
b)違和感や、場合によって痛みを感じてしまいます。角膜はとても敏感にできており、神経も沢山存在します。体の中で最も痛みに対して敏感な組織と言われています。眼に小さなゴミやホコリが入っただけでも、とても痛いですよね。
c)まばたきがスムーズに行えなくなってしまいます。
また、角膜表面に涙の涙膜があることで、更に表面が平滑になり、凸レンズとしての角膜の性能が向上します。
前回の動物病院だより「ドライアイ」でも書いたのですが、涙が不足すると、角膜炎などの角膜障害が起こり、角膜炎により角膜が白く濁ったり、角膜に色素沈着が起こり、透明であるべき角膜が黒くなったり、あるいは角膜に血管が入り込んできたり、更に角膜上皮が脱落し、角膜潰瘍を起こしたりと、あらゆる角膜の病気を併発し、角膜の透明性を失ったり痛みを伴うようになってしまいます。
涙がいかに大切なものであり、また、涙の3層構造がいかにうまくできているものなのか、ご理解頂けたでしょうか?
これを読まれた方は、少しだけ物知りになったのではないかと思います。
今月は、涙の構造と働きについて、お話しいたしました。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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