第45回
【知って得する動物の病気の豆知識 その41】
涙のはなしPart2:「ドライアイ」(乾性角結膜炎)
先月は、涙のはなしPart1と題し、涙があふれてしまう眼の病気の1つ「涙やけ」について、お話し致しました。

 

今月は、逆に涙が少なくなってしまい、眼が乾燥気味になってしまうドライアイ[専門的には乾(燥)性角結膜炎と言います]についてお話し致します。
(以後、この文章内では皆さんにわかりやすくするために“ドライアイ”という言葉を使います。

 

ドライアイというと、良く耳にするのは、パソコン等でまばたきの回数が減少することで、眼に違和感を感じる症状のことを言います。
人間も動物も、常にまばたきをする事で、角膜の表面を常に涙で湿しており、角膜を乾燥から守っています。

 

しかし、犬や猫はパソコンをする訳でもなく、まばたきも自然に行なっています。したがって、犬や猫のドライアイは人間の(いわゆる)ドライアイとは全く違います。
犬や猫のドライアイは、涙を分泌する涙腺の分泌細胞の機能そのものが低下してしまう病気です。一番根本となる涙の分泌量が色々な原因により、減少してしまう病気ですので、まばたきの回数を増やしても改善することのない、やっかいな眼の病気なのです。
猫よりも犬での発生が多く、シーズー・パグ・ペキニーズは、他の犬種よりも発生率が高いようです。

 

 

■ドライアイの原因

 

1.免疫介在性疾患:少々難しい名前ですが、免疫システムの異常で、免疫細胞が自己の涙腺の細胞を非自己(異物)と間違って認識してしまい、自分の涙腺細胞を破壊してしまうことにより、起こるドライアイです(涙腺細胞が破壊されると涙を作ることができなくなってしまうのです)。犬のドライアイの原因の中で、一番多い原因です

 

2.全身性疾患:たとえばジステンパーウィルスに犬が感染すると(予防注射で予防はできます)ドライアイが起きる事があります。これはジステンパーウィルスが全身に感染したうちの1つとして涙腺細胞に感染すると、涙腺の分泌機能が低下してしまうことにより起こります。ジステンパーに対する治療で運よく回復した犬では、その回復にともない涙腺分泌機能が回復するケースがあります。

 

3.神経性障害:涙の分泌に関係する神経細胞が冒されたり、あるいはまばたきをするための神経(顔面神経)が冒されたりすると、ドライアイが起こることがあります。

 

4.慢性眼瞼結膜炎:眼瞼炎(まぶたの炎症)や結膜炎等を慢性化させてしまうと涙腺組織にも炎症が広がり、その炎症により涙腺の分泌細胞の機能が低下してしまうこともあります。

 

いずれにしても、1番目にあげた免疫介在性のドライアイが一番多いのです。

 

 

■症状

 

1.普通の結膜炎と似かよった症状で
【1】黄色いねっとりとした眼やに及び、
【2】白眼(眼球結膜)や上下のまぶたの内側の結膜(眼瞼結膜=アカンベーをした時に見える結膜)の充血です。

普通の結膜炎と間違えられやすいのですが、普通の結膜炎の眼薬等の治療では治りません。

 

2.角膜炎:涙の量が少なくなってしまうことにより、角膜に酸素や栄養が十分に行きわたらなくなってしまいます。結果的に様々な角膜障害を引き起こします。その代表が角膜炎で、飼い主さんから見て、角膜の一部が白っぽく濁ったり、色素沈着を起こし逆に黒く濁ったり、また透明な角膜(角膜は本来血管のない組織です)に血管が辺縁により入り込んでしまったり、角膜は傷つきやすくなったりします。角膜が極軽度濁ってもわかりにくいのですが、部屋を真っ暗にしてペンライト等で照らすと良くわかります(一度試してみると良いでしょう)。

 

3.眼の表面(角膜表面)の輝きがなくなります。

 

4.本来、正常に涙が出ている健康な眼では、よく観察すると眼球と下まぶた(下眼瞼)が接する部分に、ほんの少量の涙が貯まっているのが観察されます(メニスカスと言います)。しかし、ドライアイの動物では、その部分に涙が貯まっている状態は観察されません。

 

 

■診断

 

シルマーティアテスト:これは1mm単位で目盛りのついた涙の量を測定する専門のろ紙のような試験紙を下のまぶたに入れ、1分間で何mm試験紙が濡れるか調べる簡単な試験です(正常は1分間で12〜27mm濡れます)。

 

 

■治療

 

治療はドライアイの原因により様々です。
それらの原因の中で一番多い原因である免疫介在症ドライアイの場合、主に免疫抑制剤の入った眼薬が使用されます。この眼薬で全てのドライアイが治る訳ではありませんが、多くの場合点眼を始めて2〜3週間くらいで眼が潤いはじめ、黄色い独特の眼やにも減少してきます。このように治療に反応のあるケースでも、多くの場合、終生点眼を続ける必要があります。特に早期に発見し早期に治療を始めた場合、治る率は高くなると考えられます 。

 

 

今月はドライアイ(乾性角結膜炎)についてお話し致しました。
いつも言うことですが、今回もやはり早期発見・早期治療が1つのカギとなります。
今まで、結膜炎だと思い、処方された結膜炎の眼薬を点眼しても、どうも眼やにが減らない、あるいはどうも治りにくいということがあれば、一度、動物病院で涙の量を測定してもらう事も必要かもしれません(他にも結膜炎が治りにくい原因は色々とありますので、結膜炎が治りにくいケースの全てがドライアイであるとは言えないことを頭に入れておいて下さい)。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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