第44回
【知って得する動物の病気の豆知識 その40】
涙のはなしPart1:「涙やけ」
今月は、涙のはなしPart1として「涙やけ」についてお話し致します。

 

自分の犬の眼頭の毛が茶色に染まって気になっている方や、またそのような犬を見かけたことのある方も少なくないかと思います。
涙やけは、特にマルチーズ、プードル、シーズー、チワワなどの犬種に多く発生するようですが、他の犬種でも発生します。猫では、ペルシャ猫のような鼻の短い猫種で多く見られます。

 

そもそも、涙やけは、以下に述べるような色々な原因により、過剰に涙がたまり、眼頭から涙があふれ出てしまうことにより、眼頭付近の毛が茶色に変色してきてしまう病気のことを言います。
涙の成分が長時間、毛の部分を濡らしていると、毛の色が変色してしまうのです(涙や唾液には被毛を茶色に変色させてしまう物質が含まれているのです)。

 

涙があふれてしまう原因は、大きく3つに分かれます 。

 

 

■涙の過剰生産
涙の量が増えてしまう眼の病気です。
例えば、結膜炎や逆さまつ毛、角膜炎等で、直接眼の表面に刺激が起きたり、過敏な状態になると涙があふれてしまいます。
こういったケースでは、痛みや痒みを伴っていることがほとんどです。この状態を長期間放置しておくと、毛が茶色く変色してしまうばかりではなく、他の重篤な眼の病気を併発してしまうこともあり、やっかいな事になってしまいます。
早期に結膜炎等の根本原因を治療してあげることが大切と言えます。

 

 

■涙の排泄障害
涙の量は正常なのに、あまった涙を鼻や口の中へ排泄させる管(鼻涙管と言います)が詰まってしまい、結果的に涙があふれてしまいます(本来、涙は常に作られ、余った涙は一部、眼の表面から蒸発し、更に一部は涙管・鼻涙管を通って鼻や口の中へ排泄されており、作られる涙の量と蒸発・排泄される涙の量がバランスを取り、常に眼の表面を潤している涙の量が一定に保たれるようになっています)。したがって、鼻涙管が眼やにのようなもので詰まってしまうと、涙があふれ、涙やけになってしまいます。
鼻涙管が詰まってしまっても、痛みや痒み等の違和感はありませんが、長期間放置しておくと、眼頭の皮膚が常に濡れていることにより、細菌が繁殖し、臭いがしたり、場合によっては眼頭の部位の皮膚に炎症が起きてしまうことがあります。
鼻涙管が詰まっているか否かは、簡単な検査で調べることができます。もし、検査の結果、鼻涙管が詰まっている場合は、その詰まりを取ってあげる処置をすれば、涙やけは治ります。
しかし、まれなケースとして、生まれつき(鼻)涙管が開通していなかったり、鼻涙管が細かったりすると、涙やけは治りにくいものとなってしまいます。

 

 

■涙の生産も排泄も正常でも起こる涙やけ
特に、長毛種に起こります。
涙の生産も排泄も正常なのに、眼の付近に生えている毛が常に眼に入ってしまっていると、涙がその毛を伝って涙が外に出てしまいます。ろうそくの芯にろうが伝っていくようなものです。これは、眼の周り(特に眼頭付近)の毛を、こまめに短くしておいてあげることにより、予防できます。

 

 

今月は、涙やけについてお話し致しました。

 

涙やけがなくなり、眼がすっきりきれいになると、より可愛くなることと思います。
涙やけが気になる方は、一度かかりつけの先生にご相談してみると良いと思いますよ。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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