第43回
【知って得する動物の病気の豆知識 その39】
「肛門嚢炎」
新年あけましておめでとうございます。
本年も動物達と人との楽しい生活が送れますようお手伝いができたらと思いますので、よろしくお願い致します。

 

今月は新年早々、しもの方のお話しで申し訳ございませんが「肛門嚢炎」という病気についてお話し致します。

 

 

肛門嚢とは犬や猫の肛門のすぐ斜め横下にある左右一対の(時計の4時と8時の位置)袋状の分泌腺の事を言います。
この肛門嚢が発達していることで有名な動物として、スカンクがあげられます。スカンクは他の動物に襲われた時、緊張し(その時おしりに「キュッ」と力が入り)逃げる瞬間にこの肛門嚢から非常に臭い分泌物を出して身を守る役割をしていると言われています。

 

犬や猫にもスカンク程大きくはないものの、やや退化した肛門嚢があり、興奮や緊張した時などに自然に臭い分泌物を出す事があります。

 

通常は、この肛門嚢の働きとして重要なものはありませんが、自分の臭いとしての個体識別に関しての何らかの役割をしていると言われています。
犬同士が会った時お互いにお尻の臭いをかぎあっている姿を目にしますが、そういった時にも、肛門嚢がある役割をしているようです。

 

その肛門嚢に細菌感染(肛門のすぐ近くなので細菌感染が起きやすい)が起きたり、分泌物が貯まり炎症が起きたりした状態を「肛門嚢炎」と言います。
「肛門嚢炎」になると初めは痒くなり、お尻のあたりを気にしたり、独特な姿勢でお尻を床やじゅうたんの上にこすりつけるようになります。この時点で発見し、動物病院に連れて行ってあげれば、通常は肛門嚢の分泌物をしぼり出すだけで本人もすっきりし、大事に至ることはありません。
しかし、発見が遅れると、痛みが起きてきたり、場合によっては、自潰(はぜる事)を起こし、血膿が出てしまう事もあります。

 

こう言った場合は、自潰して穴があいてしまった部分を治すために、更なる治療が必要になってしまいます。
そういった意味でもお尻を気にしたり、お尻をこするようになったら、早めに動物病院で分泌物を出してもらって下さい。
また、肛門嚢の内面がただれて出血してしまっていたり、慢性化してすぐに分泌物がたまり再発しやすい場合は、手術で肛門嚢を摘出することもあります。本来、大きな役割はもっていない分泌腺なので、手術で取り除いても全く問題はありません。手術で肛門嚢を摘出すれば、慢性・再発性の肛門嚢炎による痛みから解放してあげることができます。

 

 

肛門嚢炎は犬にも猫にも起こりますが、圧倒的に犬での発生が多いのです。また、犬の場合は症状としてお尻をこすり出すことが多いのですが、猫の場合はそういった症状を出す事はまれですので、かえって発見しにくいと思います。
猫では自潰(はぜる事)して血膿が出て、はじめて飼い主さんが気付くと言ったケース、あるいは、感染(化膿)して、熱が出て食欲がなくなったり、お尻のあたりを触ると痛がると言った症状で気付くこともあります。
いずれにせよ、肛門嚢炎を疑う症状に気付いたら、自潰する前に動物病院で診察を受けましょう。

 

 

今月は肛門嚢炎についてお話し致しました。
肛門嚢炎に関してはご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、知らない方のためにもと思い書いてみました。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。
動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が、飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でも、お気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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