第40回
【知って得する動物の病気の豆知識 その36】
「猫免疫不全ウィルス感染症(FIV)」
今月は猫同士で伝染する猫免疫不全ウィルス感染症(俗に言う猫エイズ※この病気は猫だけの病気でヒトをはじめ犬、ウサギ、小鳥・・・etc.他の動物には感染しません)についてお話し致します。
それでは、このウィルスはどのようにして感染するのでしょうか。
この病気にかかった猫の唾液や血液の中にウィルスは存在し、主にこの病気にかかった猫とのケンカ等の咬傷からウィルスが感染すると言われています(唾液中にもウィルスは存在しますが、お互いに舐めあう程度であれば一般的にウィルスは感染しないと言われています)。また、まれにウィルスに感染した母猫から子猫に母子感染(垂直感染)することもあると言われています。
このウィルスに感染してもすぐには症状は出ませんが、一般的に最終的には数年後に必ず死に至る病気です。
感染した猫は、感染後1ヶ月〜2ヶ月くらいで軽い発熱や軽度のリンパ腺が腫れる程度の軽い症状を1ヶ月〜長くて1年以上示すことがあり、この時期を【急性期】と呼びます。この急性期はそれ以外の症状を示すことはほとんどなく、見過ごされてしまうことも多いようです。
この急性期の後、長い【無症状キャリアー期】に入ります。この無症状キャリアー期は2〜4年以上続き、その間は外見上健康そのもので全く症状はありません。言い換えると元気いっぱいなのはいいのですが、外に出て他の猫とケンカし、あるいは同居の猫とケンカして、ケンカ相手にウィルスを感染させてしまうことになり、この病気をさらに慢廷させてしまう役割をしてしまいます。
たとえば、慢性の口内炎や歯肉炎(口内炎の痛みにより食べにくくなったり、食欲が減少したりします)、慢性の下痢、慢性の鼻汁や呼吸器症状、リンパ腺の腫れ、化膿、発熱・・・etc:どの症状もFIVに限った症状ではなく他の病気でも同じような症状が出る事があるので、FIV抗体検査等により、FIVによるものか否か、原因を突き止める必要があります。
一般の飼い主さんの多くは、やっとこのARC期に入ってからの症状に気づき、動物病院を受診するケースが多いと思われます。言い換えるとARC期よりも前の数年間の期間は、飼い主さんにとって「何かおかしい」と気づく症状はあまり出ないと言う事です。
このARC期が終わると最終的なエイズ期に入ってしまいます。
このエイズ期に入ると余命約数カ月と言われています。エイズ期に入った猫は激しく痩せ、免疫不全のために重い感染症や悪性腫瘍になったりして、衰弱していきます。
色々な治療が言われていますが、その多くはARC期の各種の症状を緩らげてあげる対症療法のことで、この病気を完全に治す治療法が現在のところ確立されていません。それでもARC期の対症療法は重要で、例えば口内炎で食餌を食べにくい場合炎症を治したり、緩らげてあげれば、再び食べられるようになります。要するに完治目的の治療ではなくQOL(クオリティー・オブ・ライフ=残された期間をなるべく生活の質を落とさず、苦痛を減らすための治療)の向上のための治療になります。
現在、日本にはFIVに対するワクチンはありません。
従って、ウィルスに感染している猫と接することのないように、飼育してあげることが最大の予防になります。また、現在猫を飼っている方の場合、注意しなくてはいけないケースは、新たに新しい猫を迎える時です。できれば、ウィルス検査をし、ウィルスの感染がないことを確かめてから、新しい仲間として迎え入れることです。室内飼育の場合、一緒にいるグループ全員がウィルスに感染していないことがはっきりしていれば全く安全なのですから。
今回お話し致しましたように、この病気にはワクチンはないものの、飼い方や、ウィルス検査の徹底により、ほとんど予防することができる病気だといえるでしょう。
はっきりとした症状が出にくい病気なので、一度検査をしておくことはとても良い事だと思います。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
猫免疫不全ウィルスは、1986年にアメリカのカリフォルニア大学で初めて発見されたウィルスで、翌年の1987年には日本でも数百頭の猫が猫免疫不全ウィルスに感染していることが研究の結果明らかとなりました。この数百頭とは、ほんの氷山の一角で、言い換えるとこのウィルスを検出できるようになるまでに、日本国中いや世界中の各国ですでに慢廷してしまっていたと考えられます。
■感染
それでは、このウィルスはどのようにして感染するのでしょうか。
この病気にかかった猫の唾液や血液の中にウィルスは存在し、主にこの病気にかかった猫とのケンカ等の咬傷からウィルスが感染すると言われています(唾液中にもウィルスは存在しますが、お互いに舐めあう程度であれば一般的にウィルスは感染しないと言われています)。また、まれにウィルスに感染した母猫から子猫に母子感染(垂直感染)することもあると言われています。
■症状
このウィルスに感染してもすぐには症状は出ませんが、一般的に最終的には数年後に必ず死に至る病気です。
感染した猫は、感染後1ヶ月〜2ヶ月くらいで軽い発熱や軽度のリンパ腺が腫れる程度の軽い症状を1ヶ月〜長くて1年以上示すことがあり、この時期を【急性期】と呼びます。この急性期はそれ以外の症状を示すことはほとんどなく、見過ごされてしまうことも多いようです。
この急性期の後、長い【無症状キャリアー期】に入ります。この無症状キャリアー期は2〜4年以上続き、その間は外見上健康そのもので全く症状はありません。言い換えると元気いっぱいなのはいいのですが、外に出て他の猫とケンカし、あるいは同居の猫とケンカして、ケンカ相手にウィルスを感染させてしまうことになり、この病気をさらに慢廷させてしまう役割をしてしまいます。
この無症状キャリアー期が終わると、全身のリンパ腺が腫れる【PGL期】という期間が1〜2ヶ月程続き、その後【ARC期:エイズ関連症候群とも言います】という期間に入ります。このARC期は1年以上続きますが、このARC期になると様々な症状を示すようになります。
たとえば、慢性の口内炎や歯肉炎(口内炎の痛みにより食べにくくなったり、食欲が減少したりします)、慢性の下痢、慢性の鼻汁や呼吸器症状、リンパ腺の腫れ、化膿、発熱・・・etc:どの症状もFIVに限った症状ではなく他の病気でも同じような症状が出る事があるので、FIV抗体検査等により、FIVによるものか否か、原因を突き止める必要があります。
一般の飼い主さんの多くは、やっとこのARC期に入ってからの症状に気づき、動物病院を受診するケースが多いと思われます。言い換えるとARC期よりも前の数年間の期間は、飼い主さんにとって「何かおかしい」と気づく症状はあまり出ないと言う事です。
このARC期が終わると最終的なエイズ期に入ってしまいます。
このエイズ期に入ると余命約数カ月と言われています。エイズ期に入った猫は激しく痩せ、免疫不全のために重い感染症や悪性腫瘍になったりして、衰弱していきます。
■治療
色々な治療が言われていますが、その多くはARC期の各種の症状を緩らげてあげる対症療法のことで、この病気を完全に治す治療法が現在のところ確立されていません。それでもARC期の対症療法は重要で、例えば口内炎で食餌を食べにくい場合炎症を治したり、緩らげてあげれば、再び食べられるようになります。要するに完治目的の治療ではなくQOL(クオリティー・オブ・ライフ=残された期間をなるべく生活の質を落とさず、苦痛を減らすための治療)の向上のための治療になります。
■予防
現在、日本にはFIVに対するワクチンはありません。
従って、ウィルスに感染している猫と接することのないように、飼育してあげることが最大の予防になります。また、現在猫を飼っている方の場合、注意しなくてはいけないケースは、新たに新しい猫を迎える時です。できれば、ウィルス検査をし、ウィルスの感染がないことを確かめてから、新しい仲間として迎え入れることです。室内飼育の場合、一緒にいるグループ全員がウィルスに感染していないことがはっきりしていれば全く安全なのですから。
今月は猫免疫不全ウィルス感染症についてお話し致しました。
今回お話し致しましたように、この病気にはワクチンはないものの、飼い方や、ウィルス検査の徹底により、ほとんど予防することができる病気だといえるでしょう。
一方、万が一、自分の飼っている猫が感染していることが検査をして分かってしまったとしても、無症状キャリアー期が長い病気なので、考え方によっては「数年は生きる事ができるかもしれない(猫にとって数年はかなり大きい)」というプラス思考の考え方もできるかもしれません。また、自分の猫が感染していることがわかっていれば、ARC期に代表される症状のいずれかが出てきた時、早期発見、早期治療が可能となり長期間のQOLを維持することができると思います。他の猫に対し、このウィルスを感染させることのないように気をつけることもできます。
はっきりとした症状が出にくい病気なので、一度検査をしておくことはとても良い事だと思います。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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