第39回
【知って得する動物の病気の豆知識 その35】
「犬のジステンパー」
今月は犬の代表的な伝染病であるジステンパーについてお話し致します。
ジステンパーという病気はある程度知識をお持ちの方も多いかと思いますが、

 

【1】死亡率が非常に高い
【2】ワクチンで予防できる病気

 

以上の2点をお伝えしたいと思い、今月のテーマとさせて頂きました。

 

 

ジステンパーは、パラミキソウイルスというウイルスに属する犬ジステンパーウイルスに感染することにより起こります。
幼犬はもちろん、成犬〜老犬まで、全ての年齢の犬がかかる可能性のある伝染病です。
犬ジステンパーウィルスの感染経路は、経口感染又は経気道感染(飛沫感染)で、感染してから平均3〜6日の潜伏期間は無症状で過ごします。その潜伏期間の後、発熱や元気・食欲の低下の初期症状を示すようになり、さらにその後、本格的な様々な症状を表すようになり、多くは死に至ります。
様々な症状とは、犬ジステンパーウィルスがどの臓器・どの器官にダメージを与えるかによって決ります。
以下の症状のうちいずれかが単独、あるいはいくつかの症状が組み合わさり、症状として現れます。

 

 

◆症状

 

【1】眼や鼻の症状
一番多い症状です。主に黄〜黄緑色の膿のような眼やにや鼻水が多くなります。場合により鼻の表面が乾燥してきたり、また、涙腺がダメージを受けると涙が産生されなくなり、角膜の表面が乾燥してくることがあります。

 

【2】呼吸器症状
気管支炎や肺炎を起こし、くしゃみや咳、苦しそうな呼吸といった症状を示します。

 

【3】消化器症状
腸炎を起こし、下痢や嘔吐、食欲不振といった症状を示します。

 

【4】神経症状
脳や脊髄にダメージが起こると、口唇や耳根部・頭頂部等のチック(局所のけいれん)や全身的なてんかん様発作、あるいは後足の麻痺や起立不能等、様々な神経症状を示します。運良く病気から回復しても、神経症状だけが治らず、一生起立不能といったケースもあります。

 

【5】皮膚症状
内股や下腹部に「プツ」っとした皮膚病ができたり、パッドが短期間のうちに硬くなってくることがあります。

 

 

◆診断

 

1つ1つの症状はジステンパーに特有な症状でなく、他の病気でも同じような症状を示す病気がたくさんあります。
従って、症状だけから診断するのは難しいケースもたくさんあります。
一般的には、前述した症状以外に血液検査、レントゲン検査、あるいは抗体検査やウイルス検査(抗原検査)等の各種検査を行ない、総合的に判断します。もちろん定期的にワクチン(混合ワクチン)を接種していれば、この病気にかかることはまずない訳ですので、診断の重要な助けとなります。

 

 

今月は犬のジステンパーについてお話し致しました。
ジステンパーはワクチン接種をしていない犬がかかってしまう病気です。この恐ろしい伝染病から愛犬を守るには、定期的なワクチン接種に限ります。さらに色々な症状で来院するので、診断をするのにも困難をきわめることもしばしばあり、そう言った点で獣医師にとってもやっかいな病気と言えます。

 

20年程前のことです。私がインターンの時、静岡市内でジステンパーの歴史的な大流行がありました。その時、おそらく一生分の経験をさせてもらったように思います。
そして、2つのことを学びました。
1つは今回お話ししました様々な症状を、しかも同じ症状でも軽症〜重症まで様々な程度の症状(ほとんど重症でしたが・・・)をたくさん経験したということです。
もう1つは、ワクチンの素晴らしい効果です。当時、何十匹もの犬がジステンパーにかかって来院したのですが、ワクチン接種をしている犬は1匹たりともかかることはありませんでした。「本当にワクチンの効果ってすごいな〜」と実感したのを今でも覚えています。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい 。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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