第34回
【知って得する動物の病気の豆知識 その30】
「猫白血病ウイルス感染症(FelV)」
今月は猫同士で伝染する猫白血病についてお話し致します。
白血病とは簡単に言うと血液中にある白血球の腫瘍(ガン)のことです。
猫の白血病はなぜ起こるのかご存知でしょうか? 猫の白血病は「猫白血病ウイルス」という猫だけに感染するウイルスによって起こるのです。
ウイルスによって白血病が起こるという点では人間の白血病とは少し違っていますね。

 

猫白血病ウイルスは、感染した猫の血液や排泄物の中(唾液・尿・その他の体液)に排出されます。
そのウイルスはグルーミング(舐め合う)し合ったり、ケンカによる咬み傷、ひっかき傷、あるいは共通のトイレや食器などを介して伝染します。また母親が感染している場合には、母乳を介して伝染することもあります。ある研究では日本において健康に見える猫の6%、何らかの症状を示している猫の17%がこのウイルスに感染しているという報告があります。
このウイルスに感染してしまうと、ほとんどのケースで、ウイルスが猫の細胞の内に入り込み、遺伝子にダメージを与え、腫瘍化(ガン化)させてしまうのです。

 

感染してしまった猫は、感染初期には、ほとんどの症状は出さず、むしろキャリアーとなり、排泄物にウイルスを出し続け、他の猫の病気を伝染させてしまいます。感染中期以降は、貧血:体重減少・発熱・慢性鼻炎・リンパ腺(リンパ節)の腫れの慢性下痢等、様々な症状を呈するようになります。これらの症状のうち、ひとつだけの症状の場合もあれば、2つ以上の複数の症状が組み合わさって出てくる事もあります。

 

これらの症状は飼い主さんにとって発見しにくい症状が多く、一見正常に見えたり「しいて言うと何となく元気がないかな?」と思える程度しか症状を現さない事も多くありますので、日頃の観察が重要となります。

 

症状は徐々に(場合によっては急に進む事もあります)進んでいき、最終的には感染してから数年以内にほぼ100%死亡してしまいます。
治療は残念ながら現在のところ根本療法はなく、対症療法で一時的に症状を軽くしてあげることを目標にして治療が行なわれることが多いと思います。
しかし、幸いにも猫白血病に対するワクチン(4種混合ワクチンあるいは5種混合ワクチン)が開発され、現在ではかなり普及してまいりました。
特に「外に出る可能性のある猫」あるいは「他の猫と接する機会のある猫」の場合は、このワクチンを接種しておく事をお薦め致します。
また、自分の猫がこのウイルスに感染してしているか否かは、簡単な血液検査で調べる事ができます。心配な方は一度検査をする事をお薦め致します。
※猫白血病ウイルスは猫だけに感染するウイルスなので、人間をはじめ犬等他の動物には感染しません。

 

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。
動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。

 

他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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