第30回
【知って得する動物の病気の豆知識 その26】
「膝蓋骨(しつがいこつ)脱臼」
今月は膝蓋骨(しつがいこつ)脱臼についてお話致します。膝蓋骨とは膝(ひざ)のお皿の事を言います。
したがって膝のお皿がはずれてしまう病気を膝蓋骨脱臼と言います。
肩や肘の関節や股関節に代表されるように、多くの関節は骨と骨とが凹凸を形成してしっかりとした関節を形成していますが、膝の関節は骨と骨とが凹凸を形成する関節ではなく、靱帯や腱によってつながっている関節なのです。
そう言った点である意味、特殊な関節であり、また、その特種な構造ゆえ、トラブルも多い関節と言えます。
小型犬に多発します。ポメラニアン、チワワ、トイプードル、マルチーズ、ヨークシャテリア等での発生が多く、これら小型犬ではほとんどが内側に脱臼します【内方脱臼】(大型犬でもまれに発生しますが、大形犬では外側に脱臼【外方脱臼】する傾向があります)。生後、半年以内での発生も多く、そのような例では膝蓋骨が本来おさまっている溝(滑車溝)が先天的に浅かったり、溝が欠如しているケースもあります。また、膝への関節付近の筋肉のつきかたのアンバランスも一つのファクターとも言われています。
ソファー等へのジャンプや急な方向転換、転倒、落下等の外力。特に【1】で示したファクターを持っている犬では、少ない外力で発症しています。
症状は脱臼の程度や急性or慢性によっても違います。膝蓋骨脱臼はランク1〜4までありますが、ランク3以上は常時脱臼している状態なので重症なものです。以下に症状を述べてみましょう。
突然キャンキャンいって片方の後ろ足をあげケンケンするように歩く、特に急性のものは痛みが強い傾向にあります。
飼い主さんがだっこする時や犬が膝を曲げる時に膝蓋骨が脱臼する事もあり、“コキッ”とか“コックン”と変な音がする事があります。
【1】のような激しい痛みがなくても散歩の途中で数歩、片方の後ろ足をケンケンして、また自然に普通の歩き方に戻る事があります。このようなケースではやや慢性化していることも考えられます。
膝蓋骨が脱臼している状態が長く続くと(ランク3以上)脱臼した膝蓋骨が靱帯を引っぱり足の骨(大腿骨及び下腿骨)を徐々に変形させていきます。膝が内側へ、かかとは外側へねじれ、一見ガニ股のように見えます。しかし、よく観察すると実は内股に変形しており、ひどくなると、アヒルが腰を低くして歩くような歩き方になってしまいます(特に成長期での発症の場合は変形が早く進んでしまいます)。
【1】〜【3】の症状を放置しておくと重症(ランク4)になり、膝蓋骨は脱臼したままで、しかも足の筋肉も萎縮してしまい、後足が曲がったまま伸ばせなくなってしまいます。筋肉が萎縮してしまうと治療不可能となる可能性が高くなってしまいます。また、他の靱帯(関節内の前十字靱帯等)に負担がかかり最悪の場合、断裂を起こしてしまうこともあります。
膝が脱臼してしまうことを根本的に治すためには外科的な方法(手術)が必要となります。先ほども述べましたように、脱臼の程度により1〜4までのランクに分けられますが、より早期に、よりランクが低い(脱臼の程度が軽い)うちに手術をすれば、より簡単な手術法で、より高い成功率が期待できます(先生によりどの程度になったら手術すべきかは多少違うかもしれませんが…)。早期発見のために前述した症状があった場合には、早めにかかりつけの先生に相談して下さい。また、子犬期の検診やワクチン接種の時など膝蓋骨に関してもよくチェックしてもらう事も大切だと思います。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
したがって膝のお皿がはずれてしまう病気を膝蓋骨脱臼と言います。
肩や肘の関節や股関節に代表されるように、多くの関節は骨と骨とが凹凸を形成してしっかりとした関節を形成していますが、膝の関節は骨と骨とが凹凸を形成する関節ではなく、靱帯や腱によってつながっている関節なのです。
そう言った点である意味、特殊な関節であり、また、その特種な構造ゆえ、トラブルも多い関節と言えます。
膝蓋骨はそれらの靱帯や腱のうちの4本で十字架状に支えられ、大腿骨の溝(滑車溝と言います。)の上を、膝の関節の曲げ伸ばしの時に滑っています。以下に模式図にて説明致します。
模式図(右端)で示したように膝蓋骨が大腿骨の溝からはずれてしまう状態が膝蓋骨脱臼なのです。膝蓋骨脱臼は全ての脱臼の約20%を占めるとのデータがありますが私の印象では、それ以上の発生率に感じています。いずれにせよ、高率に発生する病気と認識されています。
■原因
【1】犬種的な要因
小型犬に多発します。ポメラニアン、チワワ、トイプードル、マルチーズ、ヨークシャテリア等での発生が多く、これら小型犬ではほとんどが内側に脱臼します【内方脱臼】(大型犬でもまれに発生しますが、大形犬では外側に脱臼【外方脱臼】する傾向があります)。生後、半年以内での発生も多く、そのような例では膝蓋骨が本来おさまっている溝(滑車溝)が先天的に浅かったり、溝が欠如しているケースもあります。また、膝への関節付近の筋肉のつきかたのアンバランスも一つのファクターとも言われています。
【2】膝関節への無理な負担
ソファー等へのジャンプや急な方向転換、転倒、落下等の外力。特に【1】で示したファクターを持っている犬では、少ない外力で発症しています。
■症状
症状は脱臼の程度や急性or慢性によっても違います。膝蓋骨脱臼はランク1〜4までありますが、ランク3以上は常時脱臼している状態なので重症なものです。以下に症状を述べてみましょう。
【1】痛み
突然キャンキャンいって片方の後ろ足をあげケンケンするように歩く、特に急性のものは痛みが強い傾向にあります。
【2】“コキッ”という異常な音
飼い主さんがだっこする時や犬が膝を曲げる時に膝蓋骨が脱臼する事もあり、“コキッ”とか“コックン”と変な音がする事があります。
【3】後足の挙上
【1】のような激しい痛みがなくても散歩の途中で数歩、片方の後ろ足をケンケンして、また自然に普通の歩き方に戻る事があります。このようなケースではやや慢性化していることも考えられます。
【4】足の変形
膝蓋骨が脱臼している状態が長く続くと(ランク3以上)脱臼した膝蓋骨が靱帯を引っぱり足の骨(大腿骨及び下腿骨)を徐々に変形させていきます。膝が内側へ、かかとは外側へねじれ、一見ガニ股のように見えます。しかし、よく観察すると実は内股に変形しており、ひどくなると、アヒルが腰を低くして歩くような歩き方になってしまいます(特に成長期での発症の場合は変形が早く進んでしまいます)。
【5】後足を伸ばせない
【1】〜【3】の症状を放置しておくと重症(ランク4)になり、膝蓋骨は脱臼したままで、しかも足の筋肉も萎縮してしまい、後足が曲がったまま伸ばせなくなってしまいます。筋肉が萎縮してしまうと治療不可能となる可能性が高くなってしまいます。また、他の靱帯(関節内の前十字靱帯等)に負担がかかり最悪の場合、断裂を起こしてしまうこともあります。
■治療
膝が脱臼してしまうことを根本的に治すためには外科的な方法(手術)が必要となります。先ほども述べましたように、脱臼の程度により1〜4までのランクに分けられますが、より早期に、よりランクが低い(脱臼の程度が軽い)うちに手術をすれば、より簡単な手術法で、より高い成功率が期待できます(先生によりどの程度になったら手術すべきかは多少違うかもしれませんが…)。早期発見のために前述した症状があった場合には、早めにかかりつけの先生に相談して下さい。また、子犬期の検診やワクチン接種の時など膝蓋骨に関してもよくチェックしてもらう事も大切だと思います。
今月は小型犬に多発する膝蓋骨脱臼についてお話し致しました。どの病気にも言える事ですが、この膝蓋骨脱臼も「早期発見・早期治療」がカギとなると思います。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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