第25回
【知って得する動物の病気の豆知識 その21】
「去勢手術」
前回は雌の避妊手術についてお話し致しました。
そこで今月は雄犬・雄猫の去勢手術についてお話し致します。
ご存知のように雄の睾丸(精巣)を取る手術を去勢手術と言います。

 

雄を飼っている飼い主さんの中には(特に猫の場合)自分側は雄なので、赤ちゃんが出来てしまうことはないので、「外で勝手に遊んでおいで」と言って自由に外出させているケースも見られるようです。
しかし、外で勝手に交尾をして、不幸な野良猫が増える問題については気づいていないのかもしれませんね。
去勢手術をする事により「不幸な子猫・子犬を増やさない」以外にも色々なメリットがあります。

 

 

■去勢手術のメリット

 

1.オス特有の問題行動が減少する。
  • 全般的に性格がおとなしくなり飼い易くなる傾向がある。
  • 家具等に尿をかけてしまう行動(なわばりを示す行動:マーキング・スプレー)が減少あるいはなくなる。
  • 発情期がなくなり、外に出たがることが少なくなる。
    去勢手術をしていないと、外に出てケンカをして化膿したり、交通事故にあう可能性が高くなります。
    また、第15回動物病院だより「猫の室内飼育のすすめ」でもくわしくお話ししましたように、外へ出て猫同志でケンカや交尾をして伝染する猫免疫不全ウィルス感染症(FIV感染症)猫白血病ウィルス感染症(FeLV感染症)等の恐ろしい伝染病に感染しないようにしてあげたいものです。
    去勢手術をすると発情期にみられる、非常に外へ出たがる欲求が減少します。去勢手術をしないで発情期になった雄猫を、無理矢理室内に閉じ込めておくことも可哀想なことだと思います。
2.各種病気にかかりにくくなる
  • 前立腺肥大という病気にかかりにくくなる。
    前立腺とは:雄の膀胱と尿道の間にある分泌組織で、精液の精子以外の液状成分を分泌する働きがありその上部を直腸が通っています。前立腺が肥大してくると排便や排尿時に痛みを伴い、力んだり便や尿が出にくくなります。また時に血尿を示すこともあります。
    去勢手術をしていない6才以上の雄犬の60%は程度の差こそあれ前立腺肥大を起こしているという統計もあります。去勢手術で前立腺肥大は予防できます。
  • 前立腺肥大になってしまった場合の治療としても、去勢手術が有効です。
    去勢手術をしないで前立腺肥大になってしまった場合でも去勢手術をすることにより、肥大した前立腺は小さくなります(その他にもホルモン注射等の内科的な治療法もあります)。
  • 精巣ガン(精巣腫瘍)にかからなくなる。
    特に※陰睾(潜在睾丸)の場合、正常な位置(陰のう内)にある睾丸(精巣)に比べて、7〜8倍程腫瘍化する(精巣ガンになってしまう)可能性が高いと言われています。
    また、正常の位置(陰のう内)にある睾丸が腫瘍になりやすくなる年齢は一般的に9才くらいと言われていますが、陰睾の睾丸の場合、かなり早期に(3才くらいで)腫瘍になる傾向が強いと言われています。要するに陰睾の睾丸の場合、腫瘍になる確率が7倍程高く、また腫瘍化する年齢も3才くらいとかなり若いうちから発生があるということです。
    したがって陰睾の場合、早期に(1才前後で)去勢手術をすると精巣ガン(精巣腫瘍)の心配もなくなりますし、そうすべきです。
    ※陰睾(潜在睾丸)とは:
    本来、睾丸は陰のう内(袋の内)に2つあるべきなのに、1つまたは2つとも陰のう内には存在せず、お腹の中やソケイ部(内股の根部)にある事を「陰睾」や「潜在睾丸」と言います。飼い主さんが触っても睾丸が1つしかなかったり、1個も触れなかったりすることで、発見できます。本来は犬の場合、胎児の時期から生後1〜3ヶ月(個体差があります)位までは、睾丸は自分のお腹の中にありますが、生後1〜3ヶ月の間に陰のう内に降りてきます。また陰睾は遺伝することがしられていますので子孫を残すことは推められません。

 

もちろん陰睾ではなく正常な位置(陰睾内)にある精巣であっても先程お話ししたように高齢になってから腫瘍化する可能性は十分あります。その点でも、去勢手術をしておけば腫瘍化する可能性はゼロですので安心することができます。
去勢手術は何かかわいそうと感じる方もいるかもしれませんが、手術自体は短時間で終わる手術ですし、動物への負担もほとんどありません。また、まれに去勢手術や避妊手術のあと、太る傾向が現れることもあるようですが、低カロリー食等を与えコントロールする事で多くの場合解決します。

 

 

先月は避妊手術のメリット、今月は去勢手術のメリットについてお話し致しました。
一般の方々も、こういったことを知識として知っておくことはとても重要なことだと思います。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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