第24回
【知って得する動物の病気の豆知識 その20】
「避妊手術」
今月は雌犬や雌猫の避妊手術についてお話し致します。
近年では犬の放し飼いをする人も少なくなり、また犬・猫ともに室内飼育が普及してきたこともあり、不幸な仔犬・仔猫は当時よりもずっと少なくなってきたと思われます。振り返ると、犬や猫にとってみれば決して幸せな時代ではなかったと思います。
しかし、避妊手術のメリットはそればかりではありません。
1.卵巣のみ摘出する方法
2.卵巣と子宮の両方を摘出する方法
の2種類があります。どちらも妊娠することはなくなるので避妊の目的は達成されます。
卵巣・子宮の両方の病気の発生をなくすためには2.の卵巣・子宮の両方を摘出する方法がベストですが、1.の卵巣だけ摘出する方法でも子宮の病気の発生はかなり抑えられると考えられます。これは子宮の病気の多くは卵巣の機能異常(ホルモンバランスの異常)によって起こるからです。私の個人的な考えとしては、卵巣・子宮の両方を摘出することをお推めしています。卵巣・子宮の両方を摘出しておけば卵巣の病気にも子宮の病気にも、かかることは絶対にないわけですから・・・。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
私が子供の頃(30年程前)は犬と言えば番犬であり、残飯整理係といった飼い方がとても多かったと思います。庭に鎖で繋がれ、知らない間に放し飼いの雄犬と交尾してしまったり、また猫は自由に外出し、まだ1才にもならない仔猫だから大丈夫だと思っていた猫が、雄猫と交尾してしまい、お腹が大きくなり、やがて「生まれた子供をどうしたら良いものか」という悩みにさいなまれ・・・。
近年では犬の放し飼いをする人も少なくなり、また犬・猫ともに室内飼育が普及してきたこともあり、不幸な仔犬・仔猫は当時よりもずっと少なくなってきたと思われます。振り返ると、犬や猫にとってみれば決して幸せな時代ではなかったと思います。
避妊手術の第1の目的は望まれない不幸な仔犬・仔猫を増やさないようにするという事です。(1匹・2匹は飼ってくれる人を探すことはなんとかできるかもしれませんが、もし、5匹も6匹も生まれたら飼ってくれる人を捜せなかった残りの仔達はどうなるのでしょうか?)
しかし、避妊手術のメリットはそればかりではありません。
■避妊手術のメリット
1.発情がこなくなる
- 犬の発情期における出血(いわゆる生理)がなくなる。
(時に室内犬では床を血液で汚したり、生理ナプキン等の煩わしさがなくなります) - 猫の発情期には“ギャーギャー”連日、連夜鳴き続けることが多く、飼い主さんが寝れないといった事もしばしば・・・。
そんな鳴き声による悩みも解消されます。
- 犬では初回の発情の前に避妊手術をすると99.5%乳腺腫瘍の発生が抑えられます。
また、1回目の発情後では92.0%、2回目の発情後では74%と発情を重ねるごとに予防効果は対数的に減少し、2才半以降に手術したケースでは残念ながら避妊手術をしていない場合と発生率は変わらなくなってしまいます。
また、猫の場合でも生後6ケ月齢までに手術したケースでは91.0%、7〜12ケ月齢までは86.0%、13〜24ケ月齢までは11.0%、24ケ月以上では避妊手術をしていない場合と発生率は変わらなくなってしまいます。以上を要約すると、犬では初回の発情の前に、猫では生後6ケ月齢までに避妊手術をしておくと乳腺腫瘍にかかってしまう可能性は限りなく「ゼロ」に近づくということです。
- これらの子宮や卵巣の病気の多くは約5〜6才を境に発生が増加してきます。特に子宮蓄膿症は発生が比較的多い病気で、我々獣医師も日常的に遭遇します。子宮蓄膿症になってしまうと、体調の悪い状態での手術をしなくてはいけないケースも多く、また、発見が遅れると命に関わる病気なのです。
「もう2才半を過ぎてしまったので先程述べた乳腺腫瘍の予防効果はなくなってしまった」という方も沢山いらっしゃるかもしれませんが、子宮蓄膿症を予防できるメリットはありますので、2才半過ぎても避妊手術をしておいてあげるということは十分な価値があると思います。
■避妊手術の方法
避妊手術の方法には
1.卵巣のみ摘出する方法
2.卵巣と子宮の両方を摘出する方法
の2種類があります。どちらも妊娠することはなくなるので避妊の目的は達成されます。
卵巣・子宮の両方の病気の発生をなくすためには2.の卵巣・子宮の両方を摘出する方法がベストですが、1.の卵巣だけ摘出する方法でも子宮の病気の発生はかなり抑えられると考えられます。これは子宮の病気の多くは卵巣の機能異常(ホルモンバランスの異常)によって起こるからです。私の個人的な考えとしては、卵巣・子宮の両方を摘出することをお推めしています。卵巣・子宮の両方を摘出しておけば卵巣の病気にも子宮の病気にも、かかることは絶対にないわけですから・・・。
今月は犬や猫の避妊手術についてお話し致しました。避妊手術は不幸な仔犬・仔猫を増やさないだけでなく、本人にとっても色々な病気を予防してくれるといった大きなメリットがあります。中年以降になって発生が多くなってくる乳腺腫瘍や子宮蓄膿症を予防してくれることは大きな魅力です。
もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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