第22回
【知って得する動物の病気の豆知識 その18】
「肥満」
今月は飼い主さんも「わかっているけれどもついつい…」と言った事が多い、肥満についてお話し致します。

 

近年、ペット用スナック類等数えきれない程の種類がペットショップに陳列され、乱売される状況の中で、肥満の犬や猫が増えて来ているようです。多くは飼い主さんの不適切な与え方(本来は総合栄養食と表示されているドッグフードやキャットフードを主食として与え、ペット用スナック類は多くとも全体の10%以下とすべきなのに「これしか食べないから…」と言って多く与え過ぎてしまったり、中には主食として与えてしまったり)によるものが多く、飼い主さんの責任と言えるかもしれません。

 

ある動物病院向けのフード(処方食)メーカーの調べでは、動物病院に来院するすべての犬のうち25%が肥満傾向にあり、また猫も同様に全体の25%が肥満傾向にあるという調査結果が示されています。言い換えれば4匹に1匹は肥満傾向にあるという事です。
特に猫を飼っている方の中には、太っている方が愛嬌があって可愛らしいと思っている方もいらっしゃるようですが、肥満は様々な病気を起こしやすくする一番大きなファクターなのです。
以下に肥満に併発しやすい病気をあげてみましょう。

 

 

■肥満に併発しやすい病気
  • 循環器系の病気(心臓血管系疾患)
    心肥大や心不全あるいは高血圧等…肥満でない場合より70%程増加
  • 関節の病気
    関節炎や椎間板ヘルニアあるいは靭帯断裂等…肥満でない場合より50%程増加
  • 皮膚の病気
    皮膚病の発生率…肥満でない場合より30%程増加
  • その他の病気
    糖尿病・呼吸困難・難産・免疫低下・内分泌(ホルモン)のアンバランス・腫瘍・肝障害・運動嫌い・暑さに弱くなる…etc

 

今述べたように肥満の動物達は心臓病・高血圧・椎間板ヘルニア・糖尿病・腫瘍等、一端発病してしまうと非常に治りにくいやっかいな病気を併発しやすくなるのです。

 

 

それでは肥満度をチェックしてみましょう。
肥満度をチェックするのに動物病院では以下に示すBCS(ボディコンディションスコア)の表を基準に使われる事が多くなってきました。これは犬も猫も体型を5段階に分け、外見の型体をわかりやすく絵で示し、その他理想体重との差や体脂肪率、実際に飼い主さんが肋骨等を触った感触等の肥満度を見るポイントが示されています。

 

■BCS(ボディコンディションスコア)表
ボディコンディションスコア・犬
ボディコンディションスコア・猫

 

どうでしたか? お宅のワンちゃんやネコちゃんは痩せ過ぎたり太り過ぎたりしていませんでしたか?

 

 

■ダイエットのポイント
●フードをカロリーの低いフードに切り替える
  1. ドライフードは100gに対し300kcal程度、あるいはそれ以下が良いでしょう。
  2. 低カロリーフードを与える量は、目標体重が現状の体重の15%以内の減量で良い場合は、その目標体重に合わせた量を、目標体重が現在の体重の15%以上の減量が必要な場合では、とりあえず現在の体重の15%減の体重に合わせた量を与えます。
  3. 今までのフードの量を減らすだけのダイエットは空腹感のみ与えるだけです。確かに総カロリーは減少しますが、カロリー以外の体に必要な栄養(例えばカルシウム等ミネラル類、微量元素やビタミン類など)も減少してしまいます。低カロリーフードならカロリーだけ落としつつ必要な栄養が十分に入っているはずです。

 

●おやつ類はなるべく与えないようにする
  1. どうしても与えなくてはならない場合は、まずは今まで与えていた量の半分以下にして、体重が減っていくか確認しながら量の調節をしましょう。
  2. もしおやつ類を与えるとしても、おやつとしてではなく何かのごほうび(しつけの時にちゃんと命令を聞いた時や、ちゃんとお留守番ができた時等)といった感覚で与えましょう。その時の1回の量は大豆ぐらいの大きさで何回かに分けて与えましょう(それでも十分に喜ぶはずです)。

 

●ダイエットプログラムを計画する
  1. 1週間に1度くらい体重測定を行ない、ダイエットプログラムがうまくいっているかチェックしましょう。
  2. ダイエットのペースは、15%以上の減量が必要な場合は8週間前後に現在体重から15%減量した体重になるようにします。(例えば現在10kgの体重を7kgにしたくても、とりあえず、8週間後の減量体重は10kgから15%減の8.5kgを目標体重とします)
    それでもまだ肥満傾向にある場合は、8週間が終わった後、再度ダイエットプログラムを計画します。また、15%以内の減量で理想体重が達成できる場合は8週間後が目標体重になるようにプログラムします。
  3. 目標体重はBCS(ボディコンディションスコア)の表を参考にして下さい。はっきりしない場合は多くのケースで1才前後の体型が理想と言われています。

 

●その他注意点
  1. 肥満になってしまう原因として、ホルモン等の病気や太りやすい体質等になっている場合があります。ダイエットプログラムがうまく行かない場合はかかりつけの動物病院にご相談下さい。
  2. ダイエットがうまくいった後、リバウンドしないように注意しましょう。
  3. 食事療法以外、無理な運動で体重を減らす努力をする事はおすすめしません。肥満の状態でやせる程の運動をさせると、関節の病気や心臓の病気を悪化させる場合もあります。また、運動でやせるためにはかなりの運動量が必要になります。ただし、肥満予防やリバウンド予防には適切な量の運動はとても良い事だと思います。

 

 

今月は肥満についてお話し致しました。肥満を放っておくと高齢になってから今回述べたような、やっかいな病気を併発してしまう可能性が高くなってしまいます。「今、健康だから太っていもいいや」などと考えないで下さい。また、素人判断でのダイエットは危険な場合もあります。ケースバイケースの事もありますので、この「動物病院だより」を参考にしつつ、一度かかりつけの先生に相談してみて下さい。

 

「風邪は万病のもと、肥満もまた万病のもと」

 

もの言えぬ動物達の場合飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの勤めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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