第19回
【知って得する動物の病気の豆知識 その15】
「猫の泌尿器症候群(F.U.S)」
今月は冬になると多くなる病気(他の季節にも発生しますが)の1つである猫の泌尿器症候群についてお話致します。
犬も猫も腎臓結石や膀胱結石、あるいは尿道結石など、泌尿器に石(結石)ができてしまう病気があります。もちろん、こういった泌尿器にできる結石は口から食べてしまった石が泌尿器に入ってしまうのではなく、尿中のマグネシウムやカルシウムなどのミネラルが、濃度などの条件がそろうと結晶化(丁度食塩水が濃くなり飽和状態になると食塩の結晶が沈澱(析出)してくるのと同じように)し、その結晶同士がくっついて徐々に大きくなり結石になるのです(まるで雪の結晶が集まって雪だるまになるようなものです)。

 

犬も猫も雄の方が雌に比べて尿道は細く、しかも長いので小さな結石でも尿道につまってしまいます(尿道閉塞)。また、雄猫の尿道は特に細いので、結石になる前の結晶の状態でも尿道につまることが多いのです。
猫の泌尿器症候群(以後F.U.S.とします)になると、今お話し致しましたように、細かい砂粒のような結晶(リン酸アンモマグネシウム結晶=ストルバイト結晶)が膀胱内に沈澱し、膀胱粘膜を傷つけ、血尿や頻尿を起こします。
また、更に恐ろしいことに結晶がペニスにつまり、尿道を閉塞すると尿が出なくなり膀胱がパンパンになるまで尿が貯まってしまい、治療が遅れると尿毒症を起こし、命に関わることもある恐ろしい緊急疾患なのです。

 

 

■F.U.S.の原因
  • 結晶のもとになるマグネシウムの含有量の多い食事(一番重要なファクターです)
  • 飲水量の低下
  • 肥満
  • 尿量や排尿回数の減少
  • 膀胱内に結晶・結石のできやすい体質

 

以上のような要因がいくつか重なり合うと、尿中のマグネシウム濃度が高くなり(また尿のPH(ペーハー)がアルカリ性に傾くと)、マグネシウム結晶が沈澱し尿道につまるなど、様々な症状を起こしてしまいます。

 

 

■F.U.S.の症状
  • トイレにしゃがみ込み、便秘の時のように力んだり苦しそうに叫んだりする
  • トイレに頻繁に行くが尿が少しずつしか出ない、あるいは全く出ない
  • いつもと違う場所で排尿する
  • ペニスを舐めてばかりいる
  • 尿に血液が混ざる
  • 元気がなく嘔吐したり、食欲がなくなる(尿毒症)

 

以上のような症状が出たら、様子など見ている余裕などありません。緊急疾患なので、すぐに診察を受けて下さい。雄猫は元々雌猫に比べて尿道が細くてつまりやすいので、特に注意が必要です。

 

■F.U.S.の予防
一度この病気にかかった猫は、治療後も専門の処方食(動物病院で処方してくれます)を与える必要があります。もとの食事にもどすと再発してしまう可能性が高いからです。また、まだこの病気にかかったことのない猫でも予防的にこのフードを与えることは大変有効であり、かかってしまうかも知れないこの病気になるのを未然に防ぎます。

 

今月は猫の泌尿器症候群、特に雄猫における尿道閉塞の恐ろしさについてお話し致しました。
この病気で重要な事は、

 

1.早く発見する事
2.できれば予防してあげる事
3.一度病気になってしまった場合は再発を防ぐために獣医さんの指導に従う事

 

以上の3点だと思います。
大変、恐ろしい病気なので、症状など頭の隅に入れておいて下さい。

 

※F.U.Sを起こす結晶は、今回お話し致しました「ストルバイト結晶(リン酸アンモマグネシウム結晶)」以外にも、他に何種類かの結晶があります。一番多いのが、「ストルバイト結晶」です。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。
動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気遣ってあげる事が飼い主さんの務めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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