第16回
【知って得する動物の病気の豆知識 その12】
「子宮蓄膿症」
今月は「子宮蓄膿症」という病気についてお話したいと思います。

 

この病気は一般的には中年から老年(時として中年以前にも)の雌犬・雌猫に最も多くみられる生殖器(子宮)の病気で緊急な手術を要することも少なくありません。
人でよく言われる蓄膿症は鼻の副鼻膣という所に膿(ウミ)がたまってしまう病気ですが、この子宮蓄膿症は子宮に細菌感染を起こし、子宮の中に膿がたまってしまう病気です。場合によっては膿がたまった子宮は正常の10倍以上にもふくれ上がってしまうこともあり、この膿の細菌毒素により食欲や元気がなくなり、急速に衰弱していってしまいます。放っておくと腹膜炎を併発したり、感染した子宮が破裂したりして、死に至ります。

 

 

■症状及び特徴
  • 避妊手術をしてない中年以降の雌犬・雌猫に発生することが多い。
  • 発情が終わって1〜2ヶ月後に発生することが多い。(重要)
  • 陰部より膿(色はクリーム色から暗赤色の血膿み色までさまざま)が出る。
    またはそれを気にしてしきりに陰部を舐める。
    (子宮の出口である子宮頚管のしまっているタイプでは、陰部より全く膿が出ないこともよくあります)
  • 急速に元気や食欲がなくなる。
  • 水を飲む量が増え、尿量も多くなる。(重要)
  • 病気が進むと胃液を嘔吐するようになる。
  • お腹がふくれてくることがある。
  • 発熱することがある。

 

 

■診断
前述した症状をふまえたうえ、陰部より膿が出ていれば診断の助けになります。ところが子宮頚管がしまっており全く膿が出ないタイプもあり、このような場合、診断は難しくなります。しかし、近年の血液検査やレントゲン検査、さらに超音波(エコー)検査の普及によりほとんどのものは早期に診断をつけることができるようになりました。

 

 

■治療
なるべく早期に手術をして、膿のたまった子宮を摘出することです。早く発見すればする程、体力もあり、毒素のまわりも少ないので手術の成功率は高くなります。逆に発見が遅れると、腹膜炎や腎不全を併発し、命に関わるようなケースもでてきます。

 

 

■予防
特に子供を生ませたいという希望がなければ、若いうちに避妊手術をしておけば、この病気になりません。また、「第9回乳腺腫瘍」でお話ししたように、若いうち(できれば初めての発情の前に)避妊手術をしておけば乳ガンにもなりにくくなり、一挙両得になります。

 

 

今月は子宮の病気である子宮蓄膿症についてお話し致しました。秋は発情の季節ですが、本文でお話したように発情後1〜2ヶ月して発生しやすくなる病気です。避妊手術をしていない犬や猫の場合、いつ発情があったか記録しておくと大切な情報となるかもしれません。また、一般状態(食欲や元気及び陰部など)をよく観察しておくことが重要です。

 

もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの務めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも「ペット相談室」でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

----- このページを閉じてお戻りください -----