第15回
【知って得する動物の病気の豆知識 その11】
「猫の室内飼育のすすめ」
先日、ペット相談室に、『飼っている猫が外に出て車にひかれてしまわないか心配だ』との問い合わせがありました。(返答済)
そこで今月はお約束通り、猫を室内飼育してあげるメリットについてお話ししたいと思います。

 

日本では昔から猫は室内・室外を自由に出入りさせて飼うのが一般的な飼い方とされてきました。おそらく昔の家の構造も1つの要因かもしれません。しかし、今と昔とでは、猫をとりまく環境(交通事情・住宅事情等)が異なります。

 

屋外に出ることにより、猫自身に次のような災害がふりかかってくるのです。

 

●交通事故
●毒物の拾い食いによる中毒
●ケンカによる外傷・化膿
●ノミ等の寄生虫の感染
●交尾や咬み傷から感染する種々の伝染病

 

例えば・・・
■猫エイズ(正式には猫免疫不全ウイルス感染症=FIV感染症:ワクチンなし)
この病気は猫だけの病気で人や犬に感染するような事はありませんが、咬み傷等から猫同志で伝染します。
このウイルスに感染すると猫の免疫機構を弱らせて他の病気にかかりやすくなり、最終的には死亡します。

 

■猫白血病(正式には猫白血病ウイルス感染症=FeLV感染症:ワクチンあり)
この病気も猫だけの病気で人や犬に感染することはありませんが、感染猫とのグルーミングや食器の共用等で伝染します。このウイルスに感染すると多くの猫は白血病やその他の腫瘍を発症し、80%の感染猫は3年以内に死亡すると言われています。
※動物病院で簡単な血液検査で、FIVとFeLVに感染しているか否か検査することができます。

 

一方、飼い主さんの知らない所で社会問題を起こしている場合もあります。
例えば・・・
●生ゴミあさり
●糞公害
●畑・花壇あらし
●避妊手術をしていない場合の野良猫の増加(不幸な仔猫を増やさないで!!)

 

 

以上のような事は一般の人にはもちろん、動物の苦手な人にはなおさら不快感を感じさせてしまうに違いありません。

 

しかし、「室内だけで飼うとストレスがたまってしまいそうだ」「室内だけではかわいそうだ」と思う人も多いかと思います。
しかし猫は部屋の中だけでも実に上手く充分な運動をするものです。廊下を走り回ったり家具の上に跳び乗ったり・・・それでも運動不足を心配する方は、猫じゃらし等の遊び道具で10分でも20分でも遊んであげれば何もかわいそうなことではないのです。
むしろ交通事故で大きな傷を負ったり、中毒で命を落としてしまう方がずっとかわいそうなことだと思います。

 

小さな頃から外に出さずに飼育してあげれば、発情期を除いては外に出ようという発想をしないものです。(生後半年位で去勢や避妊手術をしておけば、発情も来ないので外に出たがるのも防げます)
しかし今まで外出する癖がついてしまっている猫の場合は自分で勝手に扉を開けて出て行ってしまったりして、むずかしい事もあるかもしれません。
従って、この『室内飼育の推め』は今すぐに!ということではなく、これから何年か先に欧米並に猫が室内で安全に飼われるようになればと思い、提案致しました。そうなれば猫にとって一番幸せなことであり、また社会的な問題も少なくなってゆくことだと思います。また皆さんもご意見等お聞かせ下されば幸いです。

 

もの言えぬ動物の場合飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。
動物達が私たちに安らぎを与えてくれるお返しとして、動物達が楽しく健康でいられるように気づかってあげる事が飼い主さんの務めとも言えるでしょう。
そのためにも、この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
他にもこんなことが知りたいということがあれば、お電話でも掲示板でもお気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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