第12回
【知って得する動物の病気の豆知識 その8】
「猫の行動学(主になわばりについて)」
 可愛いしぐさ、時には身勝手なマイペース、いつも私達を楽しませてくれる猫達ですが、猫が本来持つ野生の特性を理解することによって、更により良いパートナーシップを築けると思います。

 

 今回は私達の生活圏(屋外)に暮らしている猫達の行動を追うことによって、飼い主さんと猫との関係を探ってみようと思います。

 

 

 犬と猫は古くから私達人間の良きパートナーとして生きてきました。しかし犬と猫では、生活様式や行動パターンは全くと言って良い程違っています。犬はリーダーを中心とした群れ社会、一方猫は単独ななわばり型です。猫の行動は「お互い関わらないこと」が基本となっています。しかし人間社会との関わりの中で、なわばりの広さや範囲、又群れを作るか否かが左右されるようになってきました。その最大の要因は餌と休憩所です。なかでも餌が十分確保できるかどうかでなわばり(行動圏)のパターンが左右されると言っても過言ではないでしょう。

 

次の表は琉球大学の伊澤雅子先生の報告をまとめたものです。

 

 一匹が生きて行くのに精一杯の餌の量では、単独でなわばりを守らなければならないけれど、餌が豊富に集中して安定して確保できる状況が生まれると、なわばりが小さくなり重なって、結果的にメスを中心として血縁グループが出来てくるわけです。血縁同士だったら排他的な動物である猫も「親しく」暮らせるのですね。
 またBのグループにはおもしろい現象が観察されます。それは「ネコの集会」と呼ばれるもので、食後すぐに帰ることもせず、数時間餌場周辺にとどまります(通常は夜間)。特に何をするわけでもなくただ座っているだけですが、これは餌を食べる時にしか顔を会わせないグループ内での「顔見知り確認」という役割りがあり、無駄な闘争をなくすためと考えられています。

 

さて、みなさんのお宅で暮らしている猫達はどうでしょうか。毎日豊富な餌や水、安心して休める場所が用意されていますよね。(表のCグループに近い)

 

 

 猫達が持つ唯一の濃い絆は母と子の関係と言われていますが、心を許しあえる飼い主さんとの関係はまさに親子関係なのかもしれません。飼い主さんをなめたり、オッパイを吸うように手のひらをチューチュー吸い手をニギニギしたり、ピンとしっぽを立てて「餌ちょうだい」「なでてね」と寄っていたり、夏などは「セミを取ったよ」と持ってきたりと、これら全ては、親子関係と言える行動です。
 又、他の猫と同居することになっても環境が整っていれば少しづつその距離は縮まり、あなたの家庭で1つのグループとして生活できるようになると思います。
 神秘的で謎に満ちていると言われる猫ですが、彼らの野生の気持ちを理解してあげれば、よりステキな毎日が過ごせるかもしれません。

 

 今月は病気と関係ないお話になってしまいましたが、猫の生態はまだ分かっていないことも多く、ここまでのことは実際はあまり知られてません。こういった目であなたの猫を見てみるのもおもしろいかもしれません。

 

 この「動物病院だより」が少しでも皆さんのお役に立てばと考えています。
 他にもこんな事を知りたいということがあれば、お電話でも掲示板でも、お気軽にご相談下さい。
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

----- このページを閉じてお戻りください -----