第11回
【知って得する動物の病気の豆知識 その7】
「人気者のハムスター」
 アニメのキャラクターにもなっているハムスターは、ここ数年、小学生くらいのお子さんを持つ御家庭を中心に人気が高まり、年々、飼育頭数も増加している様です。私の動物病院の待合室でも、犬や猫の飼い主さん達に混ざり、小さなプラスチックの箱にハムスターを入れ、診察の順番を待っている姿も日常的になってきました。

 

 昔はハムスターというと、ゴールデンハムスターがほとんどでしたが、近年人気のハムスターは、ジャンガリアンハムスターという小型のハムスターです。

 

 

■ ハムスターの特徴
生活:ジャンガリアンハムスターの原産地は、ロシアのカザフ地方・シベリアで、地下に穴を掘って(地中は外気温の影響をうけにくい)生活しています。巣穴は寝室・食料貯蔵庫・トイレ(尿だけ)など、多くの部屋に分けられていますので、飼育する場合も飼育しやすくちゃんとトイレで排尿してくれます。又、安心して寝られる巣があればそこで寝ることでしょう。
冬眠:気温が4〜5度を下回るようになると冬眠をすることがあります。冬眠中は心拍数が1分間に4回と通常の100分の1程度にまで低下し、呼吸数も1分間に2回程度まで低下します。
食事:食事は市販の固形飼料を主体にし、繊維質に富んだ野菜やほし草を与えましょう。
その他、ニンジン・カボチャ・チンゲン菜・リンゴ・バナナ・ミカン等、時々煮干しやチーズ等を与えるのもよいでしょう。ただし一品目にかたよってしまうと、栄養バランスもかたよってしまうので、色々与えた方が良いと思います。ひまわりの種は大好物なのですが、そればかり食べていると肝臓に脂肪がついてしまったり(脂肪肝)、肥満の原因となりますので、与え過ぎないようにしましょう。
夜行性:ハムスターは夜行性なので、昼間は主に寝ていて、夜「カタカタ」と回し車を回している事が多いですね。昼間はゆっくり寝かせてあげて下さい。
:前歯は人や犬・猫と違い一生伸び続けるので、木をかじったりして長くなり過ぎないようにしています。それでも個体によっては歯が長くなり過ぎてしまい、食餌を食べることができなくなってしまう事もあるので、そういった場合は動物病院で切ってもらう必要があります。
臭腺:おへそとよく間違えるのがおへその位置にある臭腺で、特にオスで発達しています(ゴールデンハムスターは左右の脇に一対あります)。この臭腺は時に炎症を起こしたり周囲が皮膚炎になったりする事もあるので、時々だっこしておなかの方も観察しましょう。
寿命:寿命は約2(〜3)年と、犬や猫に比べてずっと寿命が短い動物であるという点がさびしい限りです。しかしその短い2年間でも太い絆をつくれるか、十分可愛がってあげられるかは、飼い主さんにかかっています。

 

 

■ ハムスターの病気
ハムスターにも様々な病気があります。ここでは代表的な2つの病気について説明致します。

 

癌(ガン):今述べた様にジャンガリアンハムスターの寿命は約2年ですから、家庭で飼い始めて1年もすればもう中年、言い替えれば癌になりやすい年令となります。ハムスターは動物の中でも非常に癌になりやすい様で「体にしこりができた」といって来院されるケースが多いのです。まずそのしこりが癌なのか否かを、細胞を取って調べます。その結果、手術して取った方が良いものであれば手術でそのしこりを取ります。体の小さなハムスターですが、麻酔からの回復には力強いものがあります。
子宮蓄膿症:この病気も中年(1才以上)になると起こりやすいメスだけの病気です。犬や猫では有名な病気ですが、ハムスターにも起こります。
子宮に細菌感染が起き、陰部(おしっこをする所)より血液や膿(うみ)が出て来る事があります。放っておくとたいてい1〜2週間以内に衰弱・死亡してしまいます。唯一助ける方法は早く発見して手術(開腹手術)をし、細菌感染してしまった子宮を摘出する事です。体が小さいので手術も簡単ではありませんが、手術がうまくいけば元通りの元気な体になります。

 

 

 今月はハムスターについてお話し致しました。小さな動物ハムスターと言えども私達と同じ1つの命をもっています。小さな命をこれからも大切にして頂ける様この「動物病院だより」が少しでもお役に立てればと考えております。
 もの言えぬ動物達の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私達にやすらぎを与えてくれるお返しとして動物達が楽しく健康でいられる様に気づかってあげる事が飼い主さんの務めとも言えるでしょう。

 

 他にもこんな事を知りたいという事があれば、お気軽にお電話でご相談ください。
(ご相談内容をこの「動物病院だより」の題材にさせて頂くこともあるかと思います)
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです

 

 

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