第8回
【知って得する動物の病気の豆知識 その4】
「歯 科 衛 生」
今や犬や猫達は、家族の一員の地位を築いたといっても過言ではないでしょう。動物病院に来院する理由が単に「何か調子が悪いから」が主流だった十数年前に比べると予防注射やフィラリア予防といった、病気にならないため(予防医学)の理由が多くなってきた事実が動物達の地位を物語っていると思います。それでもなかなか難しいのが、歯の衛生管理だと言えるでしょう。夜いっしょに寝ていると「お口が臭い!」なんて感じた事はありませんか?その原因の多くは歯垢・歯周囲炎・歯石や歯槽膿漏(程度の軽いもの順)なのです。
その1 -歯みがき-
もの言えぬ動物の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私達に安らぎを与えてくれているお返しとして、動物達が楽しく健康でいられる様に気づかってあげる事は飼い主さんの務めとも言えるでしょう。
それではどうしたら良いのでしょうか?それはやはり飼い主さんが口の中までしっかりと気にしてあげるしかないのです。具体的な方法を以下に述べますが、人が毎日歯みがきするように重要な事は毎日続けるということです。(もっと簡単な方法があればいいのですが・・・。)
<歯科衛生法>
その1 -歯みがき-
- 市販の幼児用で結構です。柔らかい歯ブラシを1本用意(小型犬・猫は先の小さなものが良いでしょう)しましょう。
- 歯みがき粉は犬・猫の喜ぶ味で泡の立たないものを使いましょう。泡が立つものやハッカ味は動物が嫌い、歯みがきが嫌な事になってしまいます。歯みがき粉は動物病院にご相談下さい。
- 成犬・成猫になってから急に歯みがきをしようと思ってもなかなか難しいものでかなり努力と忍耐と優しさが必要です。(咬む犬は危険なので無理をしないようにして下さい。)ポイントは仔犬や仔猫の頃から毎日、1日1回決まった時間に決まった場所(夕食後、診察台のような少し高い台がベスト・・・。落ちないようにご注意を!!)で行い、習慣にしてしまうと良いでしょう。
- 初めから歯ブラシではなく、飼い主さんの人さし指または指にぬれたガーゼなどを巻いて歯ぐきをマッサージされる事に慣れさせることから始めましょう。この時の良いイメージを与えるように名前を呼びながら「いい子だね〜。」と優しくなだめながら、あるいは前述のおいしい味のする歯みがき粉を指先に少しつけておくと、意外に嫌がらないでやらせると思います。これから毎日行うことですから、無理やりおさえつけたり嫌なイメージを与えてしまわないことがコツだと思います。
- 歯垢・歯石のつき易い歯は一般に上の奥歯です(重点的に!)。歯と歯グキの境を軽くマッサージするよう、左右に細かく歯みがきしましょう。
- 一端、歯石になってしまうと、いくら歯みがきをしても取れません。一度きれいに歯石除去をする必要があります。動物病院にご相談下さい。歯石を取った後の歯みがきが効果的です。
その2 -歯石予防のドッグフード・キャットフード-
歯石付着の予防を目的とした、専門のドッグフード・キャットフードがあります。毎日食べる事で歯石が付いてしまう事に対し、このドッグフード・キャットフードは逆に歯垢・歯石が付くのを予防します。もちろん栄養の事も十分考えられているフードです。
そのしくみはフードの中に縦に食物繊維が密に配列されておりフードを咬むと、その密な繊維の間に歯が入り歯垢・歯石を取る作用が生まれます。毎日の歯みがきの効果に優りませんが、毎日食べているだけで歯垢・歯石が付着するのを40%カットすることが証明されています。
その3 -歯石除去-
歯みがきが出来なかったり、十分でなかったりすると、ねっとりとした歯垢が除々に硬い歯石に変わってしまいます。歯を磨かない動物達は2〜3才を過ぎると既に歯石がたまり始めます。この歯石は歯垢にミネラルや細菌が沈着し、歯にしっかりこびりついてしまったものです。この歯石を放っておくと歯石の中の細菌が歯ぐきから体に入り血液にのって心臓や腎臓・肝臓等体の中の重要な臓器に侵入し、その臓器にダメージを与え、時に命を脅かす事さえあります。
たかが歯だけの問題とあなどることはできません。特に上の奥歯は前述した通り歯石のたまりやすい場所です。奥までよく見て下さい。黄色い、あるいは褐色のものが歯石です。いったん歯石になってしまうとご家庭でとることはできません。歯周囲炎や歯槽膿漏を起こす前に、あるいは大切な内臓に問題を起こしてしまわない様に歯石を見つけたら早めに歯石除去をご相談下さい。
-いつもきれいな歯・きれいな息でいたいものです-
今月は「歯のお手入れ」についてお話し致しました。
もの言えぬ動物の場合、飼い主さんが気付いてあげる事が重要なのです。動物達が私達に安らぎを与えてくれているお返しとして、動物達が楽しく健康でいられる様に気づかってあげる事は飼い主さんの務めとも言えるでしょう。
この「動物病院だより」が少しでも皆さんのお役に立てばと考えています。他にも、こんな事を知りたいという事があれば、お気軽にお電話でご相談下さい。(ご相談内容によっては「動物病院だより」の題材にもさせて頂くこともあると思います。)
Illust:LES5CINQ(Copyright 2002-2005 All rights reserved.)
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
※この『動物病院だより』は2002年から2005年まで『ペット情報サイトプチアミ』内で連載していたものです
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