さくら

 

ある日、いつも猫ちゃんを連れてみえる優しい飼い主さんが、「ちょっとご相談したいことがあるのですが…」とおっしゃり、病院にみえました。
どうしたのかとお話を伺うと、お宅の近くの駐車場に、一匹の仔猫ちゃんがふらふらと歩いているけれど、飼い主さんは見当たらず、どこにも行き場がないようで、見ているとなんだか可哀想でどうしたらいいのか困ってしまって…というお話でした。
取り敢えず病気等の問題がないかを検査して、健康なら新しい飼い主さんを捜してみましょうということで、後日その子を病院に連れて来て頂くことにしました。幸いなことに、検査の結果どこにも異常はなく健康で、しばらく当院で預かり里親さんを捜すこととなりました。
と言っても、なかなか新しい飼い主さんは見つかりません。
困ったな〜と思っていた丁度その頃、それまで病院にいた先輩猫のちーちゃんを、名古屋にお引越しのため退職が決まっていたスタッフのお姉さんが一緒に連れて行きたいということで、先輩猫のちーこの代わりに、風来坊のその仔猫ちゃんは、そのままマスダ動物病院の大切な仲間となりました。

 

早速名前を付けようと考え付けられた名前が「さくらちゃん」。
桜の花の咲く頃にやって来たさくらちゃんは、優しく可憐な桜の花びらのような、また寅さんの「男はつらいよ」に出てくる、優しく愛らしい「さくらさん」のような、誰からも愛されるような可愛い猫ちゃんになるよう願いを込めて名付けられました。

 

そんなさくらちゃんですが、真正面から見つめられると、眼光鋭くちょっと迫力のある面構えで、優しさと可愛らしさをすぐに感じて頂くのは、ちと難しいかと思いますが、それでもこのさくらちゃん、私達の願いが叶ってとっても穏やかで愛らしく、抱っこされるのが大好きで、「さ〜くら〜♪」と呼ばれただけで喉をゴロゴロ鳴らしてすり寄ってくるような、そんな可愛らしい女の子に成長しました。
…とまとめたいところですが、やっぱりちょっと気が強いところもありまして、気に入らないことがあると、“きー!!”と、癇癪を起こす時もあるんです。
でも、そんな所も猫ちゃんらしくて、愛らしいと言ってくださる方がいるとかいないとか…。きっと「そうそう、猫はそこがたまらなく可愛いのよ♪」と、大きく頷いて下さっている方がいらっしゃるのではないかしらん!「ありがとうございます」

 

それでも、元々大人しい性格のさくらちゃんは、お年寄りの施設やホスピスを訪問するボランティアの活動に、何度か皆さんと一緒に参加させて頂きました。
本来猫ちゃんというものは、わんこちゃんと違って見知らぬ人のおひざの上で、身体を触られながらじ〜っとしていることはなかなか大変な動物なので、活動に参加出来る猫ちゃんはあまり多くはありません。
そんな中で、さくらは貴重な存在でもありました。
昔は猫ちゃんと一緒に暮らしたけれど、今の生活では猫ちゃんは飼えないからと淋しそうにお話されるおばあちゃんが、さくらの顔を見てとろ〜んと、と〜ってもしあわせそうに微笑まれ、いとおしそうに「かわいいね〜、本当にかわいいね〜♪」と喜んでくださいました。
そんな時が、私たちも一緒にしあわせを感じられるとても貴重な瞬間なのですが、それはやっぱりさくらが頑張ってくれているお陰だと、さくらちゃんには感謝です。

 

とは言うものの、さくらに触れとても喜んで頂きながらも、やっぱり猫のさくらちゃんは時々最後の方でじっとしているのが嫌になり、そわそわして落ち着きがなくなったら、「お疲れさま〜!」と休憩タイム☆
それでも沢山のお年寄りのみなさんに、「可愛い、可愛い♪」と言って頂いて、さくらはお年寄りの皆さんの、心の癒しのお手伝いを少しはさせて頂けたのではないかと思っています。

 

いつもまあるくなって寝ている姿がとっても可愛いさくらにも、ず〜っとず〜っと長生きしてほしいな〜と願っています。

 

 

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