（イヌ／メス／約6歳9ヶ月／名前・もこ）
はじめまして、マスダ先生。上記の愛犬についてお聞きいたします。
昨年の今頃夏に向けて毛をカットした際、右大腿付け根辺りに黒色の血マメのような約5ミリ程度の腫瘤に気づきました。かかりつけの獣医師に相談したところ「血管腫かも知れないけど大きくならなければ心配はない」と言われ放置しておりました。
先日6月半ばに狂犬病注射の為受診したところ、右膝関節後あたりに2〜2.5センチの腫瘤を指摘されました。獣医師からは「肥満細胞腫だったら厄介なので嘔吐などが見られたらすぐにつれてくるように」と言われました。帰宅して右大腿付け根の腫瘤を確認したところ、一回り程度大きくなっており8ミリくらいになっていました。
私なりに肥満細胞腫について調べ、ニードルバイオプシーではなく、直接膝関節後の腫瘤を切除して組織診断をしていただくことを選択しました。その際、大腿付け根の腫瘤も併せて切除していただくようお願いしました（OPはいろんな事情からかかりつけの獣医師ではない別の先生にお願いしました）。2箇所とも悪性であることを考慮し大きく切除して頂いたのですが、膝の方は血管やアキレス腱を巻き込んで大きくなっており、場所的なこともありやみくもに大きく切除することは出来なかったようです。切除した周辺組織には出来る限り半導体レーザーの照射もして頂いたとのことでした。
その後、組織検査の結果が出たのですが、2箇所とも血管肉腫との診断でした。一応いずれも完全切除と思われた・・・との結果も書かれておりました。獣医師からは今後化学療法を薦められ治療を受けることを決意しました。
そこでお聞きしたいのですが、もし現在のところ転移がなければ化学療法により今後の転移を抑え、完治することは可能なのでしょうか？（血管肉腫は早期に OPをして化学療法をすれば完治することはあるのでしょうか？）もし今後転移があった場合、化学療法をしたことにより生存率は多少はUPするのでしょうか？
術前のX-Pでは胸部に異常な陰影は認められておらず、血液検査でも全く異常はありません。腫瘍マーカー（種類は不明）も正常値でした。また、全身状態に全く問題はなく毎日元気にしております。
それにしても昨年大腿付け根の腫瘤に気づいた時点で切除していれば・・・と後悔の念にかられております。
長くなってしまって申し訳ありません。お時間がありますときにでもお答えを頂けますと幸いです。（もこのママさんより）
もこのママさんこんにちは。
もこちゃんの右足に血管肉腫（組織検査済）ができたとのこと、また手術をして下さった先生はできる限り広い範囲で切除して下さったとのことですね。
また、組織検査の結果「血管肉腫」とは言え、「一応いずれも完全切除と思われた・・・」との記載もあり、手術としてはきっちり行って頂けたと思います。ただし、悪性の腫瘍の場合、万一腫瘍細胞が残っている可能性もあるので、手術のあと化学療法（抗ガン剤）が行われるケースもあります。
血管肉腫は血管を構成する細胞が悪性に腫瘍化したもので、血管のある所（要するに皮膚や肝臓・脾臓をはじめすべての部位）なら、どこにでも発生する可能性のある悪性腫瘍です。また、一般的には血管肉腫は悪性度の強い腫瘍で急速に転移を起こす可能性のある腫瘍でもあります。ただし、同じ血管肉腫でも発育スピードやできる部位、あるいは発見から手術までの日数や手術をする時点でのステージ（進行の程度）程度により、再発、転移の確率もおのずとかわってくるので個々の予後（これからの経過）を判断するのはなかなか難しいことです。
一般的には「血管肉腫」はあまり予後の良好な腫瘍ではありませんが、幸い、今のところ胸部のレントゲン検査や血液検査上異常がないので手術後に化学療法を行うことにより、再発、転移の可能性をさらに低くすることは可能だと思いますし、初期に処置をすれば完治する可能性も（多くはありませんが）ないとは言えないと思います。
もこのママさんのおっしゃられるように「もっと早く（昨年の時点で）手術していれば」という気持ちはよくわかります。しかし、過ぎたことを悔やんでもしかたありません。
もこのママさんの選択された手術＋化学療法は腫瘍を治療するためには現在の獣医学ではベストな方法だと思います（ただし、化学療法の副作用もあるので手術して下さった先生に十分にチェックして頂きながら行っていって下さい）。
ベストな方法を選択したのだから、結果もベストな結果がでてくるはずです。それが、もこのママさんにとって良い結果になるか、良くない結果になるのかわかりませんが、その結果はもこのママさんがベストなことをしてあげたベストな結果なのだと思います。
あまり、うまい回答でなかったかもしれませんね（すみません）。
もこのママさんがんばって下さい！(2003.06.30）