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乳腺付近のしこりを手術した方がいいのか悩んでいます

(ネコ/メス/12歳/名前・にゃー)
少し前にわき腹の辺りのしこりについて質問させて頂いた者です。その後、病院へ連れて行ったところ乳腺にできた続き腫瘍だろうと言われました。
しかし、指でそのしこりを触っただけで針生検はされませんでした。
刺激を与えるとガンの進行を早めるので、手術した場合その後に切除した細胞を検査すると言われました。
乳首から少し場所がずれていることや手術をすることでの負担を考えると、本当に乳腺のガンなのか、どのくらい悪いものなのかを知った上で手術するか決めたいのですが、どうなのでしょうか。
レントゲンを取った結果は肺への転移はないとのことで、血液検査で肝臓と腎臓があまりよくないということでした。
それで今は、手術するには肝臓の機能がよくないと麻酔によるリスクが高くなると言われ、薬をもらって飲ませています。
手術をした方がいいのか、ガンと共にできるだけ長く生きられるようにした方がいいのかを決めるのに、どんなことを基準に考えればよいでしょうか?(思伊さんより)


恩伊さんこんにちは。
気の小さなにゃーちゃんをがんばって動物病院に連れて行ってあげたのですね。よかったです。

先日の八谷さんからの「しこりとニードルバイオプシーについて」の質問でお答えしましたように、いわゆるしこりが腫瘍なのか否か、又腫瘍なら何の腫瘍なのか(例えばリンパ腺の腫瘍とか乳腺の腫瘍とか…)さらに良性のものなのか悪性のものなのかを調べるためにニードルバイオプシーは一般的に行われている方法ですし、その刺激で進行を早めたりすることはありません(大学病院の腫瘍科の専門の先生にも確認済みです)。
それでも心配であれば、ニードルバイオプシーの結果手術が必要であれば、ニードルバイオプシーと手術との間隔をあまりあけないように気をつければ問題はありません。
ここまでが「しこりとニードルバイオプシーについて」のおさらいです。

しかし、少し前にお答えしましたさくらさんからの問い合わせ「胸部(乳腺付近)のしこりについて」でもお話ししましたように、乳腺腫瘍に限っては、ニードルバイオプシーで良性・悪性の判断が難しいとされています。
というのも、乳腺腫瘍の場合、悪性の腫瘍であっても良性と診断されてしまう事があるからです。
悪性の腫瘍といっても様々なタイプがあり、1つのしこりの中に悪性の細胞の部分と良性の細胞部分と混在していることが多々あるので、針の先がどちらの部分に達するかによって結果が左右されてしまうというのがその理由です。
そのためにも、検査が先か手術が先かジレンマが生じてくるのです。
また、第9回動物の病気の豆知識・その5「乳腺腫瘍」でお話し致しましたように、猫の乳腺腫瘍の90%は悪性であるという統計もあります。

にゃーちゃんに関してニードルバイオプシーをすることのメリットは、
1.にゃーちゃんのわき腹にできたしこりが、乳腺からのものか否かを調べるためにはニードルバイオプシーは意味があるのかもしれません。
2.ニードルバイオプシーをして悪性細胞が検出された場合は以後の事をどうするか判断する材料となると思います。
以上の2点が、ニードルバイオプシーをするメリットと考えられます。

一方で、先程お話し致しましたように、悪性の細胞が検出されなかった時(良性の細胞しか検出されなかった時)の判断がとても難しいのです。
本当に良性のしこりなのか、悪性の乳腺腫瘍の(たまたま針の先が)良性の細胞の部分の一部をとってきたのか判断することが難しいというデメリットもあります。

まとめると、ニードルバイオプシーをする先程述べました2つのメリットをとるか、診察して下さっている先生のおっしゃるように(乳腺腫瘍であれば90%が悪性なので)悪性を前提に手術をきちんとして摘出したものを検査する(要はこまごました検査よりも治療を優先させるということです)方法をとるのか、もう一度じっくりとかかりつけの先生と納得いくまで(肝臓や腎臓の機能も含めて)お話しをしたら良いと思います。(2003.06.12)