(ポメラニアン/オス/8歳/名前・ポニー)
ポメラニアンの男の子8歳を飼っているのですが、昨年心音の雑音、そしてX線で心臓病と診断されました。(昨年4月)それから、今年の4月までエナカルドを一日一錠投薬させていたのですが、4月の8歳検診の時に、その病院の先生に血液検査の結果、GPT 肝臓の数値が高いので、心臓病が悪化してるのかもしれないですね、といわれ、何も処置をせず、帰されました。
飼い主として、不安になり他の病院2件訪ねました。一件が地元で評判のいい医者なのですが、心音の異常、超音波(エコーの異常)がないと言われ、心臓病ではない!という診断を受け、診断の違いで迷ってしまい、もう一件訪ねました。その際今度は、心臓病初期ですといわれ、エアカルドと一日おきの処方を受け、4分の一錠になりました。
凄く頭が混乱してしまいわけ分からない状態です。
何を信じていいのかわかりません。
エナカルドを一年も投薬して、その後一年後に1日置き4分の一錠に減らせても大丈夫なものなのでしょうか?
薬はどんな薬でも、飲み方を間違えるとリバウンドで、病気の悪化に繋がるといいますが、この様な飲み方も過去の事例にございますか?
愛犬の容態などには全く変化なく、体重の減少もありません。
しかし、暑いせいか、夜の散歩のはぁはぁ。辛い様なので、距離を短くしています。それと、肝臓にはレバチオという薬をここ1ヶ月半ほど飲ませGPT122から69まで下がったのですが、ALPが181から326まで上昇しています。
ALPは何を意味するのでしょうか?
ちょっとみなさんの質問読んでいて心配になったのですが、エナカルドを1ヶ月半前から、1日おきに4分の一錠に徐々に減らしていったのですが、これは、犬自体の体の認識的に、飲み忘れたという認識にはならないのでしょうか?
それと、もう少し詳細を書くと、4月10日ALT154ALP945月7日ALT117ALP2025月17日この日からレバチオを服用ALT122ALP181そして、6月15ALT69GPT326です。(友美さんより)
友美さん、こんにちは。
友美さんのお話から察するに、だいぶ悩まれている様子ですね。少しでも解消できるようにお手伝いができればと思いつつ、私なりにお答え致しますね。
ポメラニアンのポニーちゃんが昨年の4月に心雑音を発見し、さらにレントゲン検査で心臓病(おそらく僧帽弁閉鎖不全症だと思います。:第20回動物病院だよりを参照)との診断のもとにお薬(エナカルド)を飲ませているとのことですね。
その後、今年の4月の検診でGPT(ALT)の値が高く「心臓病の悪化かも」との先生の発言に不安を感じ、他の獣医師(2つの別の動物病院)にセカンドオピニオンどころかサードオピニオンを受けたところ、3者が全て違う意見となってしまい、友美さん自身、3つの意見に振り回されてしまっているようです。
まず第一に、この僧帽弁閉鎖不全症に対して、いつから治療を始めるのかという問題があり、2つの考え方があります。したがって、獣医師によって治療開始時期が異なっています(この病気は心雑音の程度により6つのランクに分かれています)。
1つの考えは、なるべく初期に発見し、その時点(ランク1またはランク2)から現在ポニーちゃんが飲んでいる系統のお薬を開始するというものです。
もう1つの考えは、発咳等の症状が出始めてから(ランク3からランク4が目安)お薬を始めるという答えです。
近年では、どちらかと言えば前者の考えが支持されてきているようですし、私も昔からそのような考え方で診察しております。
その理由は、このお薬のメインの効果以外に、心臓の肥大をおさえてくれるというサブの効果が注目されだしたからです。
心肥大をおさえてくれることにより、理論上心雑音や心臓病の進行をかなり遅くしてくれますし、実際の診察の場でも、そのような印象を私自身もっております。
また、次に述べることは私自身も理由がわかりませんし、理論上そんなことが起こり得るのか否かわかりませんが、先程述べましたように、本院では来院時には(ワクチン等で来院されたケースでも)必ず聴診をし、なるべく初期にこの病気を発見できるように努力しております。
そのうちの極めて初期(ランク1程度)に発見できた場合、お薬を投薬しているうちに心雑音が消失してしまうケースが何例かありました。
私の推論ですが『このお薬は血管を広げ、心臓の負担を軽くしてくれる作用がありますので(細い血管に血液を送りだす方が心臓に負担がかかります)心臓の内圧に変化が生じ、血液の逆流量が減少するからなのではないかと思います。したがって僧帽弁閉鎖不全症が根本的に治るということではなく、一時的に病気の状態(病態)が少々改善されているのではないか』と考えております。
要するに、科学的な理由はわかりませんが、極めて初期(ランク1程度の時)に僧帽弁閉鎖不全症を発見し、お薬を投薬しているうちに、極めて小さくではありますが、確実に聞こえていた心雑音がいったん消えてしまうことを私自身何例か経験しているということです。
もし、これが事実であれば、ポニーちゃんにも同じ現象が起きている可能性もあると思います。
そうであれば、最初の先生はポニーちゃんの極わずかな心雑音を発見し、非常に初期の段階で病気を発見・投薬した結果、2番目以降の先生が診察した時には心雑音はなくなっており、「心臓病ではない」という診断になってしまったのではないか?という推論も成り立ちます。
私なりの推論を含めたお話をさせて頂きました。
この病気を初期のうちに発見するためには、一番重要な検査は聴診による心雑音の有無の確認です。
レントゲン検査や、通常のエコー検査よりもずっと早期に発見する事ができます。
現時点でポニーちゃんの心臓に心雑音があっても、3人の先生の意見が違うのか、あるいは先程の私の推論のように最初は心雑音があったが現在は心雑音がなくなっているのかはわかりませんが、考え方を少し変えてプラス思考で考えれば、ポニーちゃんの心臓にもし雑音があったとしても、心雑音が聞こえるか聞こえないか3人の獣医師が迷う程度であれば、ポニーちゃんの僧帽弁閉鎖不全症の程度は極めて軽いと考えて良いと思われます。
したがって、初期からお薬で治療を開始することは、心肥大や病気の進行を遅らせてくれるメリットがありますので、心臓病の極初期との前提でお薬を飲ますことは、悪い選択ではないと思います。
次に、エナカルドの量についてですが、エナカルドにも何種類かあり、1錠当り成分が1mg入っているもの、2.5mg入っているもの、5mg入っている物等あります。
いずれにせよ、初期の僧帽弁閉鎖不全症の場合、通常は最低量から始めますが、その最低量とは体重1kg当たり0.25mg(0.25mg/kg)を24時間に1回(1日1回)となっております。
例えば、体重4kgであれば(0.25mg×4kg=1mg)1日1mgを投薬します。
症状の進行とともに0.5mg/kgを1日2回まで増量したり、他のお薬を併用することになると思います。
ポニーちゃんの場合、極めて初期であることが考えられますので、体重1kg当り0.25mgを1日1回与えるのが、平均的な考え方だと思います。
ちなみに、一日おきに投薬する方法は、あまり一般的でないと考えられます。薬の効果は、24時間くらいは持続しますが、48時間は持続しないからです。
効果のあるうちは、血管を広げ、心臓の負担を軽減させてくれていますが、24時間を過ぎ、薬の効果が落ちてくる時間帯があれば、その期間は血管が収縮し、心臓に負担をかけてしまう可能性が出てきてしまいます。
最後に、GPT(=ALT)とALPについてですが、これもなかなか説明は難しいのですが、先日のペット相談室にお問い合わせのあった大内さんに対する私の回答をまずはご覧下さい。
肝臓を構成する細胞の主なものは肝細胞と胆管細胞の2種類です。
GPT(=ALT)は主に肝細胞に関連したもので、ALPは胆管細胞に関連したものです。
ポニーちゃんの場合、GPT及びALPともに軽度上昇しているようですが、その原因は簡単に追求できないこともしばしばあります(大内さんへの回答の中にも色々と書きましたように)。
もちろん、心臓がかなり悪化すれば、肝臓自身の血液循環が悪くなることにより、GPTが上昇することも考えられますが、現在のポニーちゃんのように心雑音があるか否か迷うくらいの極軽度の心臓病の状態で、GPTが上昇することは、どちらかというと私自身は懐疑的です。
まとまらない回答になってしまいましたが、なお不明な点があればあらためてご相談下さい。(2005.6.30)