(ネコ/メス/10歳/名前・エヴァ)
炎症性乳癌のエヴァの足のむくみが日増しにひどくなってきました。腹部を触ると小さな固いしこりが連なってできていました。
主治医の先生がおっしゃるには、しこりのせいで血のめぐりが悪くなっていると思うとの答えでした。
本人は相変わらず寝て過ごしていますが、鳴いたりするわけではないので、まだ痛みはそんなにないと思われます。
食欲の方はほんの少しですが自力で頑張って食べてくれています。
むくみをなくそうとマッサージをするのですが嫌がります。何とか少しでもむくみを軽減させる方法はないのでしょうか?
それと、炎症性乳癌の痛みとはどれほどのものなのでしょうか?
そして、その痛みが出た時は私達にも分かるのでしょうか?(さくらさんより)
さくらさん、こんにちは。
エヴァちゃんの場合、炎症性乳癌と確定診断はついていないものの、診察して下さっている先生のお話や、さくらさんからのエヴァちゃんの症状(むくみや腹部の連なったしこり)等から推察して、炎症性乳癌の可能性は高いと思います。
そこで、もし炎症性乳癌であればとの仮定で、お話しさせて頂きます。
前回もお話し致しましたように、炎症性乳癌は乳癌の中でも最も悪性度の強いタイプの1つで、診断がついた時点で血液やリンパ液を介して、すでに転移が始まっているケースが多い乳癌です。
炎症性乳癌と確定診断がついた場合、一般的に手術という方法は、おすすめできません。その理由は、手術してもすでに転移しているケースが多く、再発率が高いばかりでなく転移を早めたり、手術の傷がくっつきにくかったり、炎症の広がりを強めてしまう可能性が高いからです。
次に、むくみの件ですが、炎症性乳癌の場合、癌のしこりが血管やリンパ管を圧迫し、血液やリンパ液の流れを悪くしたり、癌細胞の一部が転移の時、血管やリンパ管の中に入り、つまってしまい、やはり血管やリンパ管の流れを悪くしてしまうことによりむくみが起こると考えられます。
また、炎症性乳癌の名前のように、炎症を誘発させる物質も腫瘍の部位で生産され、腫れてくるものと考えられます。
飼い主さんの気持ちとしては、「少しでもむくみを減らしてあげたい…」ということも納得できますが、エヴァちゃんがマッサージを嫌がるようであれば、やはり「痛いのかもしれない」と考えた方が良いかもしれませんね。
動物の場合、痛みの症状はみつけにくい場合があります。
みつけやすい例としては、手や足に痛みのある場合は、それでも足が着地しにくかったり、その足をかばって他の足で歩いたりと、飼い主さんの目から見ても分かりやすいケースもありますが、エヴァちゃんのようなケースでは「なんとなく動きたがらないとか、食欲がちょっと落ちる程度」にしか表現できないかもしれません(第38回動物病院だよりの「動物の痛みとペインコントロール」を参照してみて下さい)。
人間の場合でも「本当の痛みは本人しかわからない」と良く言われますが、しゃべることのできない動物達の場合は、更に難しい問題かもしれません。
結論的には、炎症性乳癌は痛みをともなうケースが多いので、エヴァちゃんに対しても痛みがあるという前提で対応してあげた方が、良いかもしれません。(2005.3.12)