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マーキングの件で悩んでいます

(トイマンチェスターテリア/オス/7ヶ月/名前・coko)
マスダ先生こんにちは! いつもお世話になっておりますここです!
先日は実際に続き診察して頂き有難うございました☆
優しい先生にお会いできて嬉しかったです!
今回cokoで悩んでいますのがマーキングの件なのです。
最近お散歩時に電信柱に脚を上げてオシッコをする様になり、これでいいのか分からないまま1週間程過ぎた位から人の足に足を上げてオシッコをひっかけてしまいました・・。
毎日ノーリードで走り回る公園なので、次の日からはリードをつけましたが、他の飼い主さんたちが「繋がれているとストレスも溜まるから、見張りながら離してあげて、しそうな瞬間に怒れば治るのでは」と言って下さり、その様にしていました。散々走り回ってる時は良いのですが、しばらくして飽きてくるとそわそわ人の足の匂いを嗅ぎ回りだすので、叱っては気をそらし引き離すを続けても、ほんの一瞬で人様の脚にかけてしまいます・・。かけた後謝っている瞬間に遠くに逃げてしまうので、怒るタイミングがつかめず今日で4回目です。
今までは全て優しい女性の方で、今日ご迷惑をかけてしまった方は前からcokoに狙われていたそうで、先程も何度も寄って行くので叱り続けていた矢先にパッと走り寄って・・。跳ね飛ばし怒り、逃げたのを捕まえた所を皆さんに見られ、「今ので反省したのでは」と言われましたが、本当に困ってしまいます。
電信柱のマーキングは全て止めさせ、決めた所のみオシッコの掛け声でさせています。その決めた所でもcokoは隅で脚を上げようとするので、真ん中で四つん這いでするようにさせます。
公園でもしきりに匂いを嗅ぎまくり、ポールなどに何度もマーキングをします。(公園は可にしてますが)
明日からは天罰法で人にしそうになったら、空き缶に石が入った物を投げて、嫌な音を聞かせるなど試してみようかとも思っています。(私が走り寄るのは追いつかないので)
どうしたら止めさせられるのか悩んでいます。なぜ、そうした行動をするのでしょう。
家ではお利巧なのですが、本来の気が強い性格が支配性となって現され、他人より順位が上と表現しているのでしょうか。他人に迷惑をかけるのは、この上なく失礼すぎます。
マーキングは全て止めさせて、迷った時に帰って来れるのでしょうか。去勢をするしかないのでしょうか?
マスダ先生、何か良いアドバイスがあれば教えて頂きたく宜しくお願い致します。(ここさんより)


ここさん、こんにちは。
先日は、遠路はるばる静岡まで来て頂きまして、ありがとうございました。
ここさんご夫婦及び、cokoちゃんにお会いできたことを本当にうれしく思っております。
cokoちゃんも7ヶ月を過ぎ、大人っぽくなってきたのでしょうか。片脚を上げ、電信柱にマーキングをするようになってきたとのことですね。
悩みは、立っている人間の足にもオシッコをかけてしまう問題行動です。こういった、いわゆる問題行動を解決していくためには、まず第一に(ここさんもおっしゃっていたように)なぜ、その行動をしているのか、犬側の心理や今までの経過や、きっかけ及び問題行動を起こした時のかけられた人の反応や、直後の対処の仕方等、様々な事を考えることが重要です。
もちろん、犬の犬種、性別、年齢、飼われている環境、今までのしつけ、犬の性格等、問題行動以前のその犬のプロフィールもとても重要です。そうすることにより、cokoちゃんが人の足になぜ、オシッコをかけているのかという原因を突き止めることができると思います。
詳細な情報は、ここさんが今回お話して下さった内容で、十分とは言えませんが、私なりに可能性として3つ程考えました。少なくとも、人の足を電信柱と勘違いしているとは思えません。
 
【1】犬種的、年齢的にあるいは最近、片脚を上げ、電信柱にマーキングをすることになった事を考えて「雄性ホルモン(男性ホルモン)が関与している」可能性が高いと思われます。ここさんのおっしゃっている支配性もこの中に入ると思います。
 
【2】初回に人の足におしっこをかけた時の、かけられた人の反応がおもしろくて(cokoちゃんにとっては、あの遊び(?)は面白かった。という一種の報酬になっているかも)この問題行動を繰り返すようになった。
cokoちゃんは頭が良い犬なようですし、またこのくらいの年齢から犬なりに色々と考えるようになってくるので、このような可能性もあるかもしれません。また、被害者が全て女性だったり、今回の被害者は以前からcokoちゃんに狙われていた人という点を考えても、この仮説もうなずけます。
 
【3】ものめずらしさ:被害者の臭いがものめずらしい。臭いに敏感な犬は、人間の臭いをかぎわけます。また、もしその人に他の犬の臭いがついていると、ものめずらしく感じたり、他の犬の臭いに反応し、オシッコをかけたりする可能性もあると思います。
 
【4】coko ちゃんにとって広い公園や、他の犬の存在がcokoちゃんの不安感を誘い、不安の結果「マーキングをしなくては!」という気持ちに追い詰められ、人の足におしっこをかけてしまう。
この仮説はcokoちゃんの場合、あてはまる可能性は少なそうです。
その理由は、被害者が全て女性、今回の被害者は以前から cokoちゃんに狙われていた人という点、また、cokoちゃんがさんざん走りまわっているときは良いのですが、しばらくして飽きてくるとそわそわ人の足の匂いを嗅ぎ回りだし、最終的に人の足にオシッコをしてしまう点です。おそらく、ここさんから見ても、cokoちゃんの不安の表情は全くなく、むしろ公園ではのびのびしている表情だと思います。
 
以上、cokoちゃんが他の人の足にオシッコをかけてしまう理由(cokoちゃんの心理状態)を私なりに考えてみました。おそらく【1】がメインで【2】と【3】が複雑にからんでいるように思います。
 
さて、それではどのようにしたら、問題行動を治す(起こさせない)事ができるかです。
 
まず第一に、犬のしつけ・行動学はここ数年、めざましく進歩しています。
基本的には「どういう行動をとったら、自分に報酬(おやつ等のごほうびや、飼い主さんにほめられること)が与えられたか、言い換えると自分にとって良い事が起きたのかを考えさせ、できた時だけ報酬を与えるといった真の陽性強化」です。
また、cokoちゃんは頭が良く、一方で繊細な子のようですので、体罰を与えた場合には、飼い主さんに対し疑惑をもつようになってしまったり、天罰法とは言え、音に対しトラウマを持ちびくびくした子になってしまったりする可能性もあります。
したがって、見つけた瞬間に跳ね飛ばし怒ったり、空き缶に石をいれた天罰法など、罰の程度や罰の仕方には差があっても、結果的に罰を与えるよりも、もしできるのであれば、報酬を与える陽性強化を試したいところです。
 
陽性強化までではないにしろ、罰を与えない方法での解決策を3つ、良いと思われる順に(cokoちゃんにとって良いと思われる順に)述べてみます。
 
【1】公園にいる人(複数のマーキングをされそうな人)にもしお願いができるなら、しつけ用にご褒美をいくつか、また、何人かに渡しておいて、公園で走り回ってストレス発散したあとに「cokoちゃん」と呼んでもらい、来たら「オスワリ」をさせてもらって、できたらごほうびを1個あげてもらいます。cokoちゃんがごほうびをもらった直後に少し離れたほかの人が「cokoちゃん」と呼び同じ事を繰り返してもらいます。ここさんもその中の一人として加わっても良いでしょう。
これを当分の間、毎日繰り返します。私の予想としては、この方法で問題行動が治る可能性が十分にあると思います。その理由としては、
(1)公園にいる人がcokoちゃんにとってオシッコをかける対象物から、自分にご褒美をくれる良いイメージの対象物となる。
(2)cokoちゃんが自分で走りまわったあと、いつもなら飽きてしまって……というときに問題行動が起きているので、こういったご褒美がもらえるゲームをすることにより、飽きさせない。
(3)公園で被害にあった人を、もしcokoちゃんが見下して(支配的に)行なっていた行動なら、cokoちゃんに「おすわり」と言う命令を出して cokoちゃんにおすわりをさせることにより、徐々にcokoちゃんは支配される側になっていく。cokoちゃんにとっても、ご褒美がもらえれば、徐々に納得していくと考えられる。
(4)何人かの離れた人の間を走り回ることにより、運動が好きで活発なcokoちゃんの運動量を満足させ、肉体的、精神的にも満足させることができる。
(5)ついでに他の人に慣れ、他の人の命令も聞ける良い子になるためのしつけもできるかも……?

以上、やってみなくては結果はわかりませんが、これで治ればベストです(公園にいる人に協力してもらえなければ、2〜3人の友人等にさくらとしてお願いしてみてください)。
 
【2】リードをつけておくか、ノーリードなら、他の人の居ない時、あるいは居ないところで行なう(少々、寂しいカモ)。
問題行動の対象物(人間)を動物から隔離するということです。あるいは問題行動を起こす刺激を動物から無くさせるという方法です。
 
【3】去勢手術:前述したように、発症の年齢や症状から推察するに、やはり雄の支配的な行動も十分にあります。
最近の犬の行動学によると、飼い主さんに対する支配行動は、去勢手術をしてもほとんど効果がないということがわかっています。
一方、他の人、あるいは、他の犬に対する支配行動は、去勢手術することで、 60%程度の確率で問題行動がなくなる(または減少する)といったデータがあります。
今回の問題も、去勢手術で60%の確率で治ると予想されます。ここさんは、去勢手術には少々抵抗がありそうですね。
しかし、例えば他人を咬むとか、他の犬を咬むといった甚大な被害が考えられる場合は、1つの解決方法の選択肢になり得ます。去勢手術は、一般的に広く行なわれている手術です。将来子供が欲しいという希望が飼い主さん側になければ、結果的に罰を与える方法よりも、犬に対し、優しい方法(この点に関しては人それぞれ考え方は違うと思いますが)あるいは、問題解決の近道かもしれません。
 
いろいろ述べましたが、まず【1】の方法をトライしてもらいたいところです。(2005.3.2)