(シーズー/メス/13歳/名前・ラン)
先日、妹が卵ぽう嚢腫の事で電話とメールで相談していました。何回もすいません。昨日、病院に行ってエコーの再検査をしてきました。
結果、当時(1週間前)2センチ×2センチの嚢腫が、ありましたが今回、少し小さくなり前は回りにありました黄体もなくなっていました。発情のピークだったみたいです。
今も、少し小さくなった卵ぽうはあります。
発情と言っても何も出血もなかったんですが。少し粘々した透明か白いオリモノがあったくらいです。
先生が言うには、今は心配はないみたいですが今度の発情に時にまた大きくなって蓄膿にかかるかもしれないとの事です。凄く心配です。
発情の時には卵ぽうは大きくなって発情が終わると小さくなるのでしょうか? それと、犬の発情は、どの位のペースなんでしょうか? 今、終わったのなら今度はいつなんでしょうか?今は、様子を見てていいでしょうか? 宜しくお願いします。(山田さんより)
山田さん再びこんにちは。
前回のお電話の後、卵胞嚢種について更に詳しく調べたので、お話し致しますね。
とりあえず、卵胞が少し小さくなったとのこと、安心しました。
一般的に健康な雌の犬の場合、発情は半年に1回の程度で来ます。ただし、個体差や年齢等による変化もあり、多少、発情回数や発情期間のばらつきはあります。
特に高齢になってくると、ばらつきが出てくることがありますが、やはり高齢になるとホルモンのバランスが悪くなり、そのようにばらつきが出てくることが個体により起こり得るということだと思います。
また、ホルモンのバランスが悪くなると、子宮蓄膿症等の生殖器の病気を起こす確率は少し高くなると考えられます。正常の発情では、卵胞は徐々に大きくなり、発情後半に卵胞は破れ排卵します。
その後、卵胞だった部分には黄体ができ、黄体期が約2ヶ月続きます。
更にその後、卵胞も黄体も活動していない休止期(無発情期)が4〜8ヶ月続き、その後(前回の発情からおよそ半年後に)再び卵胞ができてきて、発情になります。
基本的には犬の場合、こういった周期で発情をくり返します。
しかし、卵胞嚢種という病気は成熟卵胞が正常な大きさ以上に発育し、排卵しないで長く存続する病気です。
症状としては、発情が強く現れるものと無発情のものがあります。
犬も猫も、加齢とともにその発生率は高くなる傾向があります。では卵胞嚢種の犬は、子宮蓄膿症になりやすいか否かです。
結果的にいうと、まだ科学的にはっきりとしない部分もあるようですが、正常の犬に比べてもあまり子宮蓄膿症になりやすい傾向は、我々獣医師が想像しているよりも高くないかもしれないというのが、現在の考え方のようです。
科学的(統計的)なデータとして、子宮蓄膿症に患った犬の卵巣の状態は、50頭中22頭が卵巣に卵胞と黄体が存在しており、残りの28頭は黄体のみであった、という報告があります。
この統計学的なデータはさておき、その報告の中でいわゆる高齢犬における卵胞嚢種の場合、あまりホルモン的には機能していないケースがほとんどであり、ホルモン的にはあまり子宮蓄膿症の危険因子にはならないであろうというのが結論でした(その後、その報告された著者に直接お電話で確かめました)。
子宮蓄膿症になる確率を高めるホルモン的な因子として、黄体ホルモンが重要な因子であることは我々獣医師の周知のことですが、場合により、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの共存も1つの危険因子の可能性があるとも記載してありました。
しかし、先程もお話し致しましたように、多くの場合、高齢犬における卵胞嚢種では、あまりホルモン的には機能していない(卵胞ホルモンをあまり分泌していない)ので、子宮蓄膿症に特別かかりやすくなる病気ではないと考えてもらって結論ということです。
その他、以前に私がお電話でお話し致しました卵胞ホルモン過剰による貧血も、今回の「卵胞ホルモンをあまり分泌していない」ということであれば、心配いらないと思います(間違ったことをお電話で話してしまってすみませんでした)。
ただし、どの犬も発情終了後の黄体期に出る黄体ホルモンは子宮蓄膿症に関与することがあり、また、高齢であるということは、それだけで危険因子なので、これからも注意して観察することが大切だと思います。
今回、少々難しい内容になってしまったので、わからない点は気がねせず、お電話下さればお答えしますよ。 (2004.11.24)