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充実性乳腺腫瘍の治療について悩んでいます

(ゴールデン・レトリーバー/メス/6歳6ヶ月/名前・totoro)
3年程前より、発情後に想像妊娠をするようになり、ちょうどその頃に左乳房に小豆ほどのしこりを続き見つけました。Drに経過を見てもらってはいました。
半年前より、しこりが3×3ほどの大きさになり、10/26日に細胞診をして癌細胞が見つかり、11/1日に避妊手術としこりの部分切除を行いました。
病理の結果、充実性乳腺腫瘍(悪性)という結果で帰ってきました。脈管浸潤もあるとの事で、付属リンパ節と肺の転移が生ずる可能性が高いというコメントがありました。
今後の治療について迷っています。Drよりは、抗癌剤(タキソール)と免疫をあげるためにD-フラクションの経口投与を薦められました。
やる価値はあるけれど、ただ抗癌剤について、乳腺腫瘍に必ず効果が得られるということは言えないと説明を受けました。
受けてみたいという思いと、ととろの身体に負担をかけるだけになるのではないかという思いといろいろな考えが頭をめぐります。
手術に関しては、はっきりとした転移が認められるわけではないし、あまりにもからだにダメージを与えるだけになるのでやめる方がいいとの事でした。
過剰な医療は受けさせたくはないと思いながら、この子のためにしてやれることは何なのかと思います。あきらめず、QOLを守っていける方法を取りたいと願います。
お忙しいと思いますが、Drのご意見をいただければと思いメールを送らせていただきました。
Drのホームページの中の祝ちゃんの話はとても心温まり、幸せな気持ちになりました。(大西さんより)


大西さんこんにちは。
乳腺のしこりができ、11月1日に部分切除をし、病理検査の結果、充実性乳腺腫瘍(悪性)で派管侵澗もあるとの結果だったのですね。
まだ6歳6ヶ月ですし、なんとか再発や転移を起こさないようにしてあげられればと思います。
摘出したしこりが病理検査で良性であった場合には、そのまま様子をみて良いと思いますが、今回のように悪性という結果だった場合、今現在、転移等他にしこりができていなくても、いつ再発や転移をするのか心配でまたその可能性も実際にある訳です。
 
再発や転移の可能性を低くする方法として、
 
【1】拡大手術
今回部分的にしか摘出していないので、手術した付近には取り残した腫瘍細胞が残っている可能性があります。
また、病理検査の結果、脈管侵澗があるということは癌細胞が血管やリンパ管に既に入っているということで、他の乳腺(特にしこりのあった側で手術の時取っていない部分の乳腺)で付属リンパ節及び肺等に転移する可能性があるということです。
したがって、今回手術した時の乳腺全てを早期に再度摘出手術することが、なによりも(以下に述べる【2】以降の方法よりも)一番再発・転移の可能性が低くなる方法だと考えます。
もう一度手術することはtotoroちゃんにも大西さんにも、決断しにくいことかもしれませんが、私自身はこの方法が一番効果的な方法だと考え、おすすめ致します。
 
【2】抗癌剤とD-フラクション
先程も述べましたように私自身、【1】の方法をおすすめしますが、もし、再手術に対し、抵抗感がある場合の1つの選択肢かもしれません。
しかし、おっしゃるように乳腺腫瘍は抗癌剤があまり良く効く癌ではないので、その効果を期待しすぎない方が良いかもしれません。
また、D-フラクションの腫瘍に対する効果に関してですが、一言で言うと、科学的にはまだ完全に証明されたものではないと思います。
D-フラクションは最近人気があるようで(確かに抗癌剤のような副作用が出ないという点で人気があると思うのですが)、このペット相談室にも何回か、D-フラクションについての問い合わせがあり、私なりのお答えをさせて頂きました。
最近では我々獣医師専門の雑誌にもD-フラクションについての研究の掲載を目にする機会も少しづつ増えてきました。
そのうちの最新と思われる研究においても、実際に癌の動物に対する効果を統計的に(1つの科学的な方法です)確かめているものではなくin vitroの研究でした。in vitroというのは(実際の生体に対する実験ではなく)実験室内レベルの基礎的研究で例えば、癌細胞をシャーレの中で培養増殖させ、そこにD-フラクションを何パターンかの濃度で入れ、癌細胞を何%死滅させたか、あるいはどの濃度が一番効果的だったか調べる研究です。
したがって、実際の病気の動物に対する効果に関しては、まだまだ不明だと言わざるを得ません。
研究の結果科学的に効果が証明されれば、D-フラクションは今現在の健康食品という立場から、ちゃんとして医薬品にとなることでしょう。
 
【3】D-フラクションのみの治療
【2】で少々、D-フラクションの悪口を言った感じもしますが、別に否定している訳ではなく、現在ではまだ効果があるか否かはっきりしていないということです。
少なくとも副作用はほとんどないものですので、もし【1】の選択ができなく、【2】の抗癌剤の副作用等心配でQOLに不安がある場合、消極的かもしれませんが、選択肢の1つかもしれません。
 
私自身は、totoroちゃんはまだ若いので、なるべく確率の高い方法【1】をおすすめしたいと思います。あとは大西さんの考え方と主治医の先生の考え方を尊重致します。
また、相談したいことがあれば、いつでもご相談ください。(2004.11.19)