（ラブラドールレトリバー／オス／9歳）
ストルバイトで苦悶しています。ですから単刀直入に言います。ササミを与えたらいけませんか？
ジャーキーを与えたらいけませんか？ いけないとしたらなぜです？
獣医の皆さんは、異口同音に処方食しかないとおっしゃいます。どうしてなのか、誰も答えてはくれません。
飼い犬は私の子供です。親として、お医者様にはとことん説明をして頂きたい。
納得がいけば、たとえ子が悲しそうに泣いても、懸命に耐え抜いて、死ぬ気になって処方食を続けます。その位、これは深刻な問題です。（岡田さんより）
岡田さんこんにちは。
岡田さんの文章から、ものすごく真剣に悩まれている様子が伝わってきます。同じように考えていらっしゃる方も（潜在的も含め）多いと思います。
ストルバルト結晶は、体質と食餌内容（主に食事中のマグネシウム濃度）及び尿の濃縮度（飲水量）や尿のPH（ペーハー）等の条件のバランスによりできる結晶です。この結晶を放っておくと、膀胱結石や腎臓結石を起こしてしまう可能性も高く、結石になってしまうと、場合により手術や他の治療等、飼い主さんにとってもワンちゃんにとっても、とてもやっかいなことになってしまいます。
したがって、結石にならないように予防することはとても大切な事です。
それでは、予防するためにはどうしたら良いのでしょうか？
ほとんどの獣医さんは、岡田さんがおっしゃるように結石予防の処方食をすすめると思います。私も同じです。
なぜかと言うと、処方食を開発しているメーカーは、
「【1】結晶を予防する効果【2】犬の栄養学に基づいて、結晶予防以外にも犬が健康な状態でいられるように、全ての犬に必要な栄養素をバランス良く配合している」ように、研究・努力しているのです。
今言った処方食と同じものを飼い主さんが手作りするということは不可能ですし、私をはじめ多くの獣医師も不可能だと思います。
可能にするためには、栄養師の資格と獣医師の資格の両方をもった人（あるいはそれと同等の知識をもった人）でなくては難しいと思います。
このことは単刀直入に申しますと、獣医師も処方食に頼らざるを得ない現状があるということで、ある意味私自身も考えさせられ、反省する点もあるように思います。
反省とは、ホームメイドの食事を指示してあげられないということではなく、処方食を信頼しすぎで（もちろん処方食は先程も述べたように、しっかりとした研究のもとに開発されたものですから信頼できるものです）ついつい「他の物は与えないように。処方食だけで……」とまず言ってしまう傾向があるのではないかという点だと思います。
ただし、獣医師の立場からすると「確実に結晶を予防するためには処方食以外の物を混ぜることにより、結晶予防効果が落ちてしまうこと」を心配して言っている言葉だと思いますし、岡田さんにもそのように理解してもらえば…と思っています。
しかし、飼い主さんにとっても「何かあじけなくって、可哀想！」と思われるのも十分に理解できます。飼い主さんにとってみれば当然の事ですね。
私の病院でおすすめしているのが（これは処方食の製造メーカーが提案してくれたものですが）トリガラスープを作り、製氷皿で凍らせストックしておきます。
これを毎回食事のときに1つか2つ処方食に少量の水をいれたものに加えると、犬も喜び、しかも自然と水分を沢山摂取するので、尿の濃縮も減りさらにストルバイトができにくくなるという一挙両得の方法です。一度試されてはいかがでしょうか？
最後に、ささみやジャーキーを少量処方食に加えてはいけないのか、というご質問に対する私のお答えとして、少量まぜても尿中にストルバイトが出ていなく、且つ尿のPHもアルカリ性に傾いていなければ問題ないと言えるでしょう。
ただし、その場合、定期的な尿検査（季節により飲水量も違うので尿の濃縮度もかわってくるからです）をすることが大切だと思います。
以上が、私の岡田さんへの回答です。
またわからないことがあれば、いつでもご相談ください。（2004.11.12）