(ネコ/メス/17歳位/名前・はな)
慢性腎不全と診断され現在、コバルジンを服用しています。食欲もあり、元気なのですが獣医さんより透析を強く勧められています。猫のためには透析が必要なのでしょうか?
出来るかぎりのことはしてあげたいのですが、経済的なこともあり、たいへん迷っています。
猫の腎臓病はたいへん多いと聞きました。慢性腎不全の猫の飼い主さんはどのようにされているのでしょうか? ご回答よろしくお願い致します。(大野さんより)
大野さん、こんにちは。
ネコのはなちゃんは17才とのこと、大変長寿ですね。
慢性腎不全と診断されたとのことですが、診断されたときの血液検査の項目の中で、腎臓の働きを示すBUNやクレアチニンはどのくらいの値だったのでしょうか? あるいは尿比重はどの程度だったのでしょうか? そして現在、コベルジンを服用し始めて、BUNやクレアチニンはどの程度下がったのでしょうか?
一般状態(食欲や元気)は現在問題ないとのことですので、はなちゃんの場合、ある程度安定した状態の慢性腎不全あるいは慢性腎不全の中期程度ではないかと想像しています。
猫の慢性腎不全に関しては、第26回動物病院だより『猫の腎臓病(主に慢性腎不全について)』を参照して下さい。
まず第一に、慢性腎不全自体は、残念ながら治ることのない病気です(特殊な例として腎臓移植ができれば、根本療治となり得るのですが、動物の場合、現在現実的なものとなっていません)。したがって、治療の目標は、いかに長期間、良い状態を維持し、生活し続けられる(QOL=クオリティー・オブ・ライフと言います)ようにしてあげられるかに向けられます。
具体的に言うと、いかにBUNやクレアチニンをなるべく低値に保つかということとも言えます。
治療は様々な方法があります。
治療法は慢性腎不全の程度の進行の度合い(症状の程度あるいは症状の有無も含みます)あるいは各々の獣医師の考え方や、飼い主さんの要望により選択されると思います。
以下に簡易な方法順に治療法を述べてみます。
【1】食事療法
動物病院で処方される処方食のことです。食事の組成としてはBUN(血中尿素窒素)の元となる成分を制限したフードです。
【2】コバルシンやクレメジン等の内服薬
これらの内服薬は腸の中で発生したBUN(血中尿素窒素)の主成分である窒素化合物をくっつけ(吸着し)便といっしょに体外に排出させるお薬です。
【3】輸液
いわゆる点滴です。
皮下輸液と血管内輸液に分けられます。皮下輸液は背中の皮下に輸液剤を入れる方法で、血管内輸液は人と同じように血管にゆっくりと時間をかけて輸液剤を入れる方法です。皮下輸液のメリットは短時間で済むので、猫に対してのストレスはかなり低く抑えられます。
【4】透析
透析は動物の場合、人の透析のようにまだまだ普及発達しておらず、一部の動物病院でしか行なわれていないのが現状です。
例えば私の知る限り、静岡県内の動物病院で透析を行なっている動物病院はないのではないかと思います。そのくらいまだまだ普及していないということです。
透析が普及しにくい理由として考えられるのは、
1. コストの問題
2. 動物へのストレスの負担が前述した方法よりもかかると思われます。
3. 慢性腎不全に透析を行なう場合、どんな慢性腎不全の病期(初期なのか、中期なのかあるいは末期なのか→BUNが60なのか100なのか150なのか)に透析をスタートすべきか、また共通の見解がなされてないと思われます。したがって透析の施設を持っている動物病院によって「どの程度まで慢性腎不全が進んだら透析をすべきか」ということは各病院によってまちまちなのではないかと思われます。
4. 慢性腎不全という病気の性格上、1回透析をすればOKという事ではなく、継続的な治療(これは透析ばかりでなく全ての治療です)が必要な病気であるということです。
以上をまとめますと、多くの動物病院では、現時点で行なわれている主流の治療は【1】〜【3】までの治療あるいはそれぞれを組み合わせて併用している状況であるといえると思います。
私自身もこう言った治療をしており透析は行なっていませんので、透析に関して是非を言う立場にありません。
透析に関してのメリット、デメリットはかかりつけの先生におたずね下さい。特に費用・動物へのストレスや負担・治療の維持性等は十分に説明してもらって下さい。
なお、今回透析に関してのコメントの一部は、透析機械の製造元の専門の方から頂いたものを反映いたしました。(2004.08.26)