(オシキャット/オス/3ヶ月/名前・れお)
2日前に母がペットショップで猫を買ってきました。そのペットショップでは、副作用もありまだ小さくて身体への負担も大きいとワクチンは1度も接種していない状態で、今後もできるだけ接種しない方がいいと言われたそうです。
母もアレルギーや接種した部分に腫瘍ができることもあるらしいし、完全室内飼いにすればしなくてもいいんじゃないかと言っています。
本当に、ワクチンはしなくてもいいのでしょうか?
11月末頃に去勢手術をする予定なので、その時には必ず病院へ行くことになり、他の猫と接するかもしれないわけで、ワクチンは接種しないといけないんじゃないかと思うのですが、ワクチンに対する不安もあり質問致しました。宜しくお願い致します。(思伊さんより)
思伊さん、お久しぶりです。
れおちゃんが新しい家族になったとのこと、(色々な意味を込めて)良かったですね。
今日は、猫のワクチンについてのご質問ですね。
色々な伝染病は、人間をはじめ、様々な動物に存在します。
人間は人間の様々な伝染病があり、その様々な伝染病のうちの、ある伝染病にはワクチン(予防注射)があります。同じように犬や猫にも、犬には犬、猫には猫の様々な伝染病があり、やはりその様々な伝染病の内のある伝染病にはワクチンがあります。
共通している事は、人間も動物も、ワクチンが開発されているそれらの病気は、いずれも一度感染してしまうと、とてもやっかいな病気であるということです。
猫の場合でいうと、ワクチンで予防できる病気をワクチンを射たずにいて、もし病気になってしまった場合、死亡率がとても高かったり、あるいは死亡しなくても、治療するのに治療日数及び治療費がとてもかかってしまう病気であるということです。
ですから、猫のためのワクチンは開発され、現在でも猫を飼われている多くの方々が、定期的にワクチン接種を受けている訳です。
とりあえず、これで猫のワクチンの重要性をご理解頂けたでしょうか。
次に、室内飼育であれば、ワクチンを接種しなくても大丈夫なのかという点に関してですが、たとえ、れおちゃんを一生室内飼育して室内から一歩も出さないと言っても、ウイルスというのは、とっても小さなものです。もちろん眼には見えません。
外出した飼い主さん、あるいはそれ以外の人の手や足の裏、あるいは衣服に付着し、室内に入ってくることも考えられます。
特に猫の混合ワクチンの中に入っている「猫伝染性腸炎(別名:猫汎白血球減少症)」のウイルス(猫パルボウイルス)は、ウイルスの中でも特に小さく、また、ウイルス自身が6ヶ月以上も感染能力を持続していると言われています。
以上をまとめると、ワクチンのメリットは、とても恐ろしい伝染病から、愛猫をほぼ完全に守ってくれるということです。
それでは、デメリットはどうでしょうか。
思伊さんのお母さんがおっしゃるように、ワクチンによって、一時的なアレルギーが起こる事も稀にあります。そのほとんどは、適切な処置をすれば問題なく回復しますので、心配いりません。
また、極めて稀にあるワクチン(全てのワクチンではありません)は、接種部位に腫瘍ができるという説が一部で言われていますが、その真偽についてははっきりしていない部分もあるようです。
万が一、それが事実だとしても、それが起こる確率は先程申しました稀におこるアレルギー反応よりもさらに稀な確率(あるデータによると10万分の1)であるということです。宝くじに当たるより難しいかもしれません。
ワクチンの種類も色々ありますので、もし不安であれば、今、述べたワクチンのデメリット(副作用)をかかりつけの先生に相談し、ワクチンを選んでもらえれば良いかと思います。
さらに重要なことは、思伊さんもご質問の最後の方でおっしゃったように、現在、ほとんどの動物病院では入院室に、ワクチンを接種していない動物を入れることはないと思います。
これは、その猫のためでもありますし、入院室に入っている他の猫のためでもあります。
前述したようにワクチンで予防する病気は猫にとってみると、命にかかわるとても恐ろしい病気ですから、動物病院側もとても厳しく考えています(私の病院でもワクチンを接種していない犬及び猫は、入院室には入れません)。
言い換えると、ワクチンを射つことを義務づけているからこそ、入院している動物達がお互いに安心して、入院できるわけです。
もちろん、去勢手術にせよ、れおちゃんは思伊さんのお宅から外に出て病院に行き、麻酔から覚めるまでは、入院室にも入る訳なのです。また、それ以外にもこれから先体調が悪くなることもあるかもしれません。
そんな時はやはり思伊さんのお宅から、動物病院へと、外に出る事になると思います。したがって、自分の猫はいつ、どこに行く事になっても大丈夫なように、定期的なワクチン接種をしておいてあげた方が良いと思いますよ。
私のお答えが長くなりましたが、日頃の診察でも同じようなご質問:「室内飼いですがワクチンは必要ですか?」が比較的多いので、少々詳しくまた、私なりの考えを述べさせて頂きました。
P.S.
本来、猫も犬も、1度目のワクチンは生後50〜60日で行ないます。したがって3ヶ月(90日)の猫の場合「まだ小さいからワクチンの負担が大きい」ということは全くありません。言い換えると1度目のワクチンが遅れてしまっているので、早めにワクチン接種をしてあげた方が良いと思います。 (2004.07.14)