(ジャックラッセルテリア/メス/1歳4ヶ月)
尿漏れ関連の質問を読みましたが、うちの犬も同じ症状と思われるので、もう少しお話しを聞かせてください。
たまになのですが、おねしょ(うとうとしている時や熟睡している時にタラタラ…という感じ)をするようになりました。タラタラ…に気付いて、起こしてトイレに連れて行った後は、尿漏れはしなくなります。量&色は通常通りだと思います。シャンプー直後や散歩で雄犬に陰部を舐められた後などに漏らすことが多い気がしますが、はっきりしません。
かかりつけの獣医さんで尿検査をしていただきましたが、膀胱炎ではないとのことでした。先天的な異常もみられないので、様子をみてくださいと言われております。水を多く飲みすぎたのでは? と聞かれたのですが、普段と比べて多かったようには思いません。
12月に避妊手術をしているので、回答例のホルモン性の尿失禁というのが気になるのですが、どのような検査をすれば判明するのでしょうか? 尿検査以外はする必要がないとのことで、現在は他には何も検査はしておりません。また、必要になったとして女性ホルモンの投与に副作用はないのでしょうか? 一度の投与ではなく、これから先、定期的に投与が必要なものですか?
また、病気ではなく、おねしょ癖のようなものの場合もあるのでしょうか。その場合、根気よくトイレに連れていっていれば自然になおるものでしょうか?
お忙しいところ恐れ入りますが、ご意見をお聞かせ下さい。(wanさんより)
wanさんこんにちは。
wanさんのワンちゃんも、たまに睡眠時に尿を少し漏らしてしまうことがあるということですね。以前にも同じような症状でお2人の方からご質問を頂きました。
一例目は、ああさんからの「尿漏れの原因について」・「尿道のしまりが悪くなる原因について」です。
もう一例は、mamiさんからの「尿漏れについて」です。
ああさんの場合は、去勢手術をしてある雄犬のケースで、mamiさんの場合は、避妊手術をしていない雌犬のケースです。
従って、wanさんの場合のように避妊手術をしてある雌犬のケースとは多少ケースが違います。
しかし、尿漏れの原因は以前にお話しした通りなので、wanさんのケースでも、いずれかの原因に当てはまると思います。
wanさんの考えとしては、ホルモン性の尿失禁が気になるとのことですが、私自身も、その可能性はないとは言えないと思います。
避妊手術の後に尿漏れを起こすケースがある事は昔から言われています。
発生率で統計的に表わしたような報告は私の知る限り見当たりませんが、経験上、その確率はかなり低いもので、むしろ、非常にまれなケースだと思います。
私が開業してから17年間で、一例もありません。ただし、私がインターン時代に、一例だけ避妊手術をして数カ月くらいで尿失禁の症状を示した犬がいました。
私が言いたいことは、避妊手術の後にある期間(かなりの期間の幅はあると思いますが)おいて尿失禁を示すケースはあるにせよ、非常にまれなケースであるのではないかな、と言う事です。
もちろん、避妊手術の仕方に問題がある訳ではないということを、まずもって、ご理解下さい。
次に、「ホルモン性の尿失禁はどのような検査をすればわかるのでしょうか」とのご質問ですが、私の知る限りでは、良い検査法はないように思います。
ただし、尿漏れがどうしても困ってしまうようなケースでは、尿漏れを治療するお薬(女性ホルモンまたは膀胱の出口をしめる筋肉(尿道活約筋)を支配している神経に作用させるお薬)を、一定期間試して、尿漏れがなくなるか否かを観察する方法(治療的診断と言います)が、1つの検査になると思います。
次に、女性ホルモンの副作用に関してですが、女性ホルモンの過剰投与や長期的な投与は、骨髄抑制等、重大な副作用が起こる事がありますが、一般的には、始めの5〜7日間、少ない量を投薬します。
その後、一週間に1回あるいは症状が出た時に与えるか、更に少ない量(始めの1/10程度の量)を毎日続け、一週間ごとに様子をみながら、そのまた少ない量に減量していく方法がとられます。
そのような方法では、前述の副作用は出にくくなりますが、定期的な血液検査が必要です。
女性ホルモンを使って治療した場合、効果の出るのは、全体の41〜65%という報告があります。
一方、女性ホルモン以外のお薬で、膀胱の出口を止める尿道活約筋を支配している神経に作用するお薬は、何種類かあります。副作用は女性ホルモンに比べて少ないものの、食欲低下や高血圧等が言われております。
獣医師の経験や考え方によってどちらのお薬を使用するかは断定できませんが、一般的には後者の神経に作用するお薬を第一選択薬とするケースの方が望ましいと考えられていると思います。
こちらのお薬の治療効果は75〜90%という報告があります。
いずれのお薬にせよ、個体差はありますが、定期的あるいは継続的な投薬が必要になるケースが多いと思います。
最後に、病気ではなく、おねしょ癖の可能性についてですが、もちろんその可能性もあると思いますが、そういったケースでも、例えば、尿道活約筋のしまりがほんの少し弱いといったような、病的な状態と言うべきか否か、微妙なケースも実際には含まれていると思います。
統合的に私の意見を述べさせて頂ければ、wanさんの場合、尿漏れはたまに起こる程度なようなので、少し経過を観察すれば良いのではないかなと思います。
また、寝る前に排尿を済ませ、寝ている間に膀胱にあまり尿がたまらないように工夫をしてみたら良いと思います。
それでも観察している間に尿漏れがひどくなってしまい、困るような状態にもしもなってくるようなら、私が今回述べた事を参考にして、かかりつけの先生に再度相談されてはどうでしょうか。 (2004.06.11)