(ゴールデンレトリバー/オス/1歳10ヶ月)
前回は丁寧なご回答ありがとうございました。「5.その他の尿失禁」についてもうすこし教えていただきたく再度、質問致します。
尿道のしまりが悪くなる原因は様々なのかもしれませんが、たとえばどのようなケースがあるのでしょうか?
我が家の犬は片方が停留睾丸で、6ヶ月ほど前に去勢しました。このようなことがホルモンバランスのくずれ、膀胱の筋肉が緩むなどの尿失禁の原因になることはありえますでしょうか?
また、筋肉の緩みが原因だった場合、「膀胱の尿を貯める筋肉をゆるめ、膀胱の出口の筋肉をしめるお薬」で症状が改善する可能性はどの程度なのでしょうか?
うちの犬の表情をみているといつも呑気な感じでストレスがあるようには思えないのですが、ストレスによる尿失禁というのはありますでしょうか?
ひきつづき、かかりつけの先生と相談しながら治療を進めることになると思いますが、参考までにお教え下さい。よろしくお願いします。(ああさんより)
ああさん再びこんにちは。
「5.その他の尿失禁」について、私のわかる範囲でもう少し詳しくお話し致します。
私の言う「その他の尿失禁」は、大きく二つに分かれます。
1.非神経性の尿失禁
ホルモン性の尿失禁:雌犬の場合、まれに避妊手術済の高齢犬(極めてまれに1歳以下の若齢でも)で、尿失禁が起こることがあります。女性ホルモンの投与で尿失禁は治ります。
また、雄でも(雌より更に珍しいですが)極めてまれに去勢手術した高齢の雄犬でも尿失禁が起こることがあるようです。
私が調べた限りでは、若齢犬でも起こるという情報は見つかりませんでしたが、絶対に発生しないとは言い切れないと思います。雄の場合でも、男性ホルモンの投与で症状は改善されるようです。
先天的な泌尿器系の異常:膀胱の先天的(生まれつきの)な異常や尿管と膀胱の接続位置等の先天的な異常等、生まれつきの問題がある場合の尿失禁(ああさんのケースでは生まれてから1歳半以上も症状がなかったので、あまり考えなくても良いと思われます)。
2.神経性の尿失禁
膀胱の働きを[膀胱の筋肉をゆるめたり、緊張させたり(しめたり)という働き]を司る神経の異常にようる尿失禁:膀胱に直接分布する末端の神経あるいは脳(幹)や延髄・骨髄など、末端の神経を支配する上位の神経の異常により起こる尿失禁です。
以上の二種類に分けられます。
次に、「膀胱の尿を貯める筋肉をゆるめ、膀胱の出口の筋肉をしめるお薬」にも、何種類かあり、人医の場合は尿失禁の原因別にどのお薬が効く可能性が高いのかといったきちんとした分類があるようですが、動物の場合は、きちんとした分類があるかどうか不明です(恐らく、ないと思います)。
したがって、まず第一に男性ホルモンを試して、もし反応がない場合は、「膀胱の尿を貯める筋肉をゆるめ、膀胱の出口の筋肉をしめるお薬」のうち、代表的なものから試してみて、効果のあるお薬を探すといった(治療的診断と言いますが)方法もひとつの選択肢として考えられると思います。
あと、ストレスに関しては、あまり考える必要はないかと思います。 (2003.11.17)